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第3話

「レヴァンの髪は綺麗だな」 「そうかな、村の人達は俺の髪を見て変だって言ってたけど」 ここら辺では珍しい黒髪な俺は村ではよく指をさして笑われた。だからこの髪を綺麗と言ってくれたことはすごく嬉しい。 「さあ、行くか」 「もう行くの···?」 「ああ、ルシウス様が待ってるからな」 「そっか」 ドクドクとうるさくなる心臓。 ルキアノスに抱き抱えられながら広い廊下を進むたびその音が大きくなる。 「ここだ」 一層大きな扉の前に立つと声を出すのも困難になって、それなのにルキアノスは扉をノックして中に声をかけた。 「ルシウス様、ルキアノスです」 「───入れ」 中から低く落ち着くような声が聞こえてきて、ルキアノスは「失礼します」と言いながら扉を開けた。 「連れて参りました」 ルキアノスに地面に降ろされて、自分の足で立つ。 目の前にルシウス様がいるってことはわかってるけど、怖くて顔が上げられない。 「···人間、私の方を見ろ」 「っ」 「怖いのか?震えている」 「…る、ルキア…ノス…っ」 顔を上げないでルキアノスに抱きつくとルシウス様が俺の方に近づいてくる気配がした。 「人間、私はお前に酷いことをするつもりはない。だから顔を見せてくれないか」 優しい声で言われると抵抗できなくなって、ゆっくりルシウス様の方を向く。綺麗な金髪のとても顔の整った獣人だ。けれどやっぱり少しだけ怖くて、未だに体は震えてる。 「ありがとう。私はルシウス」 「···れ、レヴァン、です」 「ああ、レヴァン。怖くないからこっちに来なさい」 ルシウス様は優しく笑って腕を広げた。 ゆっくりとルキアノスから離れてルシウス様の様子を伺いながらその腕の中に入ると暖かい腕が俺を強く抱きしめる。 「レヴァン、お前を私の妻にする」 その言葉は衝撃的だった。

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