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第13話

「ルシウス様!こちらはいかがです?先日街に出かけた時に見つけたんです!」 「ああ、頂こう」 「はい!」 尻尾を振って俺に見せてきた新しい葉で茶を入れる。フィオナはとても楽しそうで、淹れた茶を私の目の前に置いた。 「フィオナ、話をしてもいいか?」 「···レヴァン様の話なら、もう少ししてからにしていただけると嬉しいです」 「残念だが今お前に話そうと思っていた話はレヴァンの事しかない。」 そう言うと明らさまに顔を歪めたフィオナが私の前に座り「では、どうぞ」と小さく言った。 「単刀直入に言うが、レヴァンの事を認めてやってはくれないか。」 「嫌です」 「···なぜそこまで」 「私はルシウス様のことを思っています。これから先、私が一生をかけてお護りする方はルシウス様以外おりません!なのに!なぜルシウス様のようなお方が下等な人間などと!!」 「フィオナ!」 思った以上に大きな声が出た。 フィオナは驚いて言葉を止める。 「私達獣人と人間とではそんなに差があるのか。それに私を慕ってくれているのなら何故私が愛する人間を愛そうとしてくれない!」 「···それはっ」 「レヴァンのことを下等な人間と呼ぶのなら、その者を娶った私をお前は馬鹿にしていることになる」 「ちっ、違います!」 「いいや、違わない。」 フィオナの顔色がだんだんと青くなる。 私の前にひれ伏して「申し訳有りません」と何度も謝ってくるが頭に血が上っていてどうしても汚らしいものを見る目で見てしまう。 「···すまない、また後で話をしよう。今のまま話をしても冷静でいられない」 「ルシウス様っ!」 「大きな声を出して悪かった」 部屋を出て後ろ背に扉を閉める。 深く息を吐いて自室に戻ろうと長い廊下を歩いてると何処からか私を呼ぶ声が聞こえた。 「ルシウス様!」 「なんだ、オスカーか。どうした」 執事であるフクロウ科の獣人のオスカーが慌てたように走ってきた。息を切らしていたが何かを伝えるために一度深呼吸をして姿勢を正す。 「レヴァン様が泣いております!」 「何故だ!?」 「わかりません、何も話してくださらないので···ルシウス様を呼んでおりましたので急いで駆けつけた次第です」 何かあったのかと不安になって急いでレヴァンのいる自室に向かう。扉の前ではレヴァンの泣く声を聞き、何人かのメイド達が心配そうにそわそわとしていた。 「通るぞ」 「ルシウス様!」 メイド達を避けて扉を開け自室に入る。 「レヴァン」 ベッドの上で声を上げて泣いているレヴァンに近付き抱きしめるが涙は止まることはない。 「レヴァン、落ち着け」 「る、ルシウス···っふ、うぅ···」 「よしよし、いい子だな」 頭を撫でて少しすると私の胸に頬をつけて放心したようにボーッと何処か一点を見つめだす。とりあえずは落ち着いたようで安心した。 「レヴァン、何があった」 「···ルシウス」 「何だ」 「···また、また、笑われた···変だ、って笑われた···」 「笑う?」 レヴァンの言っていることがわからなくて疑問を持ったがそのままレヴァンが言葉を続けたのでそれを聞くことは叶わない。 「あいつら、いつも···俺のこと指差して、変だ、って言うから」 「何が変なんだ。レヴァンはこんなに美しいのに」 「···ルシウス···ルシウスっ」 私に強く抱きついてくるレヴァンを膝に乗せてトントンと背中を撫でる。少しするとスースーと寝息が聞こえてきてまた眠りに入ったことがわかった。 それにしても、レヴァンを変というとは一体誰がどういうつもりでそう言ったのか、とても気になる。 「調べましょうか?」 「···いや」 いつの間にか部屋に入ってきていたオスカーが小さな声で聞いてくる。それに首を振ると「畏まりました。」と身を引く。 「オスカー」 「はい」 「···しばらくここには誰も近づけるな」 涙で頬を濡らしながら眠るレヴァンの顔を見ながら沸沸と湧いてくる怒りを静めるように静かにそう言った。

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