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第15話
「ご飯!」
「レヴァン、もう少しお淑やかに、だ。」
少し遅い時間だけれど、昼食を取るために違和感もほとんどなくなった体で廊下を走る。
ルシウスはそんな俺を注意するけど、だって、仕方ないじゃん。
「俺は17年間村育ちだもん、今更無理だよ」
「なら少しずつでいい、努力することが大切だ。」
「···じゃあ、ちょっと頑張る」
優しい笑顔でそう言われたらやるしかない。
ルシウスみたいに綺麗に歩くためにルシウスの隣に並んで同じように足を出した。
「こう?」
「まずは背筋を伸ばして」
「うん」
「胸を張るんだ、いや、そうじゃない、斜め上に張るようにして···、そう、それから軽く顎を引く」
「こう?綺麗?」
「ああ、綺麗になった」
褒められると嬉しくてついつい口元が緩んでしまう。
そのままの姿勢で歩くとルシウスが「そういえば」と立ち止まった。
「少し先の話だが、パーティーがある」
「パーティー!?」
「ああ、面倒だが行かないといけない。レヴァンのことも知ってもらわねばならん。」
「パーティーってすごくキラキラしてるんでしょう?普段じゃ味わえない独特の雰囲気というか···そういうものもあるの!?」
「···表向きはそうだがな、裏の事情を知っている身だと純粋に楽しむこともできない」
「裏の事情···?」
首を傾げてルシウスを見ると少しだけ顔を赤く染めて俺から目線を逸らす。ルシウスの視界に入るようにルシウスの周りをちょこまかと歩くと顔を上げたルシウスにきつく抱きしめられて動けなくなる。
「と、とにかく、気を抜いたらダメなんだ」
「苦しい!苦しいから!」
「今のような事をしていたらレヴァンはヒョイっと連れてかれるぞ!」
「何言ってるのさ!大丈夫だから離して!苦しいよ!」
「大丈夫じゃないから言っている!」
「それよりお腹すいたよ!早く行こう!?」
離してくれないルシウスの胸をトントン叩くとゆっくりと腕から力は抜けていって離れる。
「レヴァンを私の部屋に閉じ込めておきたい」
「そんなことされたら俺はルシウスのことが嫌いになるかもしれない」
「それは困るな」
ルシウスの大きな手をとって繋ぐ。
ゆっくりと俺に引かれて歩き出すルシウスの姿はいつもと違う幼い感じがあって可愛い。
でも可愛いなんて言ったらルシウスは怒るだろう。だから心の中でそう思うだけにしておくことにした。
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