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第17話
「人間はいつも自分のことばかりです」
そうして話を始めたフィオナさんは俺を振り返り怒りを露わにした。
「自分が良ければ何だってすぐに捨てる。簡単に裏切るんです。」
拳を強く握って怒る姿は心の底から人間を拒絶していることがわかる。
「···私達獣人は周りの者達との関係を一番に大切にします。なぜなら私達は1人では生きていけない」
「···その通りだと思います」
「それを知っているくせに簡単に裏切ってしまうことができる人間が嫌いです。いや、知らない人もいるかもしれません。それはそれでとても愚かなことだ。」
吐き捨てるように言ったフィオナさんに思わず息を呑んだ。
「フィオナさんは昔人間に裏切られたの···?」
「ええ。だからルシウス様にはあの様な思いをして欲しくない。」
「···俺は、ルシウスを裏切ったりなんてしないよ」
「···皆、そう言うものです」
悲しい目をするフィオナさんに近付き少しだけ触れていいものか迷ったけれど、ゆっくり手を伸ばしてフィオナさんの手に触れた。
「っ!離してください!」
「お、俺は、裏切らない!」
「だ、だから誰だってそう言うんです!」
「俺の一生をかけて約束するよ、もし俺がルシウスを裏切るなんてことがあったら、殺してくれて構わない」
「な、何をバカなことを···」
「それくらい、俺はルシウスを愛してる。だからもしこの先俺がルシウスを裏切ったら、俺と同じくらいルシウスのことを想ってるフィオナさんが、俺を殺せばいい」
ポカンとしてるフィオナさんにもう一度ちゃんと説明をすると首を振って「命を無駄にするな」と怒られてしまう。
「自分の命をなんだと思ってるんですか!」
「だ、だってフィオナさんに納得してもらうにはそうするしかないと思ったから···」
「そんなバカなことは二度と言わないでください!ああもう!頭が痛い!」
そう言いながらもフィオナさんは俺の手を振り払おうとはしない。
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