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第18話

フィオナさんの手をギュッと強く握ると真剣な目がジーッと俺を見る。 「俺のこと認めてください。ちゃんと、ルシウスに似合う人になるから」 そう言って更に手を握る力を強めるとフィオナさんは瞳を揺らした。 「···本当はっ」 そうしてフィオナさんが吐き出した声には少しだけ悲しみが含まれている様に思える。 「本当は···あなたがきっとそういう人ではないと、わかってるんです。···だからルシウス様があなたのことを気に入ったのだと思うから」 「じゃあ、なんで···?」 「···ただの、私の嫉妬です。小さい頃からずっと、ルシウス様には良くしてもらっていました。だから、そんな私の幸せの前にあなたがいきなり現れて···認めたくなかったのです」 視線を上げて青空を仰いだフィオナさんは口元に小さく笑みを浮かべ、俺が握っていた手にグッと力を入れてきた。 「···ルシウス様に似合う人になるには、大変な努力が必要ですよ」 「うん、だから、どうしたらいいのかこれから教えてくれないかな」 「ええ。ルシウス様が恥ずかしい思いにならなくて済む様、私があなたを指導してあげます」 初めて見たフィオナさんの明るい笑顔に俺もつられて笑った。 「───···で?」 「ひゃぁっ!」 「ちゃんとお互いに認め合うことができたんだな?」 「で、できた!できたよ!なのにルシウスは何で怒ってるの!?」 フィオナさんと話を終えて部屋に帰るとルシウスが待っていた。けれどその時の表情は怒っていて慌てて逃げようと部屋から出ようとしたところをひょいと抱き上げられ捕まえられてしまう。 「誰にも伝言を言わず勝手に部屋を出て行ったことについて怒っている」 「だって部屋の周りに人はいなかったし!たまたま通りかかったフィオナさんと話をしようって流れになって···」 「まあ、部屋の周りに人がいないという状況は俺が作ったしな···許してやろう」 ルシウスの膝に向かい合う形で座る。 軽く触れるだけのキスをすると嬉しそうに笑うルシウス。 その顔をみて好きだなぁと思う。 「ルシウス、大好き」 「ああ、私もだ」 ルシウスに抱きついて幸せを感じた。

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