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第20話

「何色がお好きですか?」 「色···色ってそんなにあるんですか?」 「ええ。この中からどれでもお好きな色をお選びください」 うさぎの耳を生やした女性の服の仕立て屋さんが眩しいくらいの笑顔でそう言う。見せられた色の種類はあり過ぎて、どれが好きか、なんて選べない。 「ルシウス!」 「何だ」 「どの色がいいかなぁ」 「···私はレヴァンにはこれが似合うと思う」 「これ?」 優しい黄色を指差したルシウス。 そう言えばルシウスの髪も金色だし、明るい色にするのはお揃いな感じがしていいかもしれない。 「じゃあこの色にする!」 「いいのか?」 「うん!ルシウスとお揃いだよ」 ルシウスの金色の髪に触れるとふっと笑う。 向かい合って笑ってると仕立て屋さんも口元を緩めて笑っていた。その顔が可愛くてジーッと見てると「あ、すみません!」と顔をそらす。 「つ、つい、仲睦まじいお二人を見ていると心が和んでしまってっ」 「謝らなくて良い」 ルシウスが満足した顔でそう言って俺から離れ静かに椅子に座った。 俺は仕立て屋さんが用意した丸い台に乗り指示された通りに体を動かして採寸をしてもらう。 「レヴァン様の前ではルシウス様はとてもお優しいお顔をしておりますね」 「ルシウスはいつもああじゃないんですか?」 「···あ、あの、レヴァン様、私などに敬語はおやめください。」 「ええっ、どうして?」 「ルシウス様には友人に話すかのように親しげに話していられるのに私には敬語でとなると恐れ多いのです····お願いします。」 困った顔でそう言われたらわかったと頷くしかない。 「あなたの名前は?」 「アドナと申します」 「じゃあ、アドナ、ルシウスはいつもああじゃないの?」 気になったことをもう一度聞けばアドナは苦笑を零しながら「まあ···」と小さく呟くように言った。 「やはり、心を許されてる方の前でしか見せないお顔があるのです」 「なら、アドナはルシウスに認められてるんだね」 「え···?何を仰いますか!私なんて!」 「だって心を許してないなら、アドナの前で決して···その、アドナの言う優しい顔を見せないよ」 ルシウスは仮にも人の上に立つ人だから、そういうことはしっかりと割り切っているはずだ。 眠たそうに目を擦ったルシウスを視界の隅で受け止めて、ふふっと笑う。 「ほら、それに寝そうだ。気を許してない人の前であんな姿は見せないでしょう?」 「···ほ、本当でしょうか?私なんかがルシウス様に···」 「うん、俺はそう思うよ」 「あ、ありがとうございます!!」 泣きそうになりながら笑って、採寸をしていた手を止め俺の手を握る。本当のことを言っただけだけど、喜んでくれたのなら嬉しい。アドナの手を握り返すと「レヴァン様のお気に召すようなお洋服を全力で作ります!」と鼻息荒く言ってくれて、その気に圧されながらも「ありがとう」と言葉を返した。

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