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第26話
金色のルシウスの鬣はサラサラしていてとても綺麗だ。すごい速さで走るルシウスから手を離した途端落ちそうでしがみついているしかない。
「ル、ルシウス!フィオナさんがまだ追いついてないよ!」
そう言うとゆっくり止まって少し距離があるフィオナさんを待った。
「ル、ルシウス様!さすがに、速すぎます!!」
「走るとつい楽しくてな」
久しぶりにこの姿でこうやって走ったから楽しくて仕方がない。溢れてくる笑いを素直に零していると「話せてる!?」とレヴァンが驚いたように叫び私の背中から降り、目の前に回ってきた。
「その姿でも話すことができるの!?」
「できるぞ」
「さ、さっきは話してくれなかったのに!」
「そうだったか?」
実際は覚えていたがあの時は少し甘えてみたくてそうした、なんて恥ずかしくて言えるわけがなく。
「ルシウス様、お散歩はもう少し邸から近いところでなさってください!ここでは何かがあったとき、誰も対処できません」
「ああ、わかった」
レヴァンが私の鬣に顔を埋めて「太陽の匂いがするぅ」とうっとりとした顔で言うものだからもう少しこのままでいたいのだが、フィオナがそれを許してくれそうにない。
「レヴァン、背中に乗れ」
「···はぁーい」
背中に乗り、しっかりと掴まったのを確認してから走る。
邸の近くに着いたので足を止めるとレヴァンが「楽しかったー!」と背中から降りた。
「ルシウス!ここに頭乗せて寝転んで!」
レヴァンが地面に座り自分の膝をトントンと叩いた。
言われた通りにそうすれば鬣を優しく梳かれて気持ち良さに喉が鳴る。
「ルシウス様!?」
「ああ、フィオナ···レヴァンが梳いてくれているんだ、とても気持ちいいぞ」
「そう言うのは部屋で2人だけの時にしてください!あなた様のそのような姿を他の誰かに見られでもしたら···」
「だが気持ちがいいのだ、今は戻りはしないぞ」
レヴァンの手が優しく私に触れるから動きたくない。久しぶりにそんな気持ちになったな、と思いながら顔を上げレヴァンをじーっと見た。
「どうかしたの?」
「レヴァンは前にいた村に、戻りたいと思うか?」
「何突然。全く思わないよ。家族もいないし、友達って呼べる人もいないからね」
「···そう、なのか···?」
「うん、だからルシウスが家族になってくれて、すごく嬉しいんだ」
心の底からの笑みに少し悲しい気持ちもあったが、レヴァンが今満足をしているのなら、それでいいのだろう。
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