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第31話

「レヴァン、着いたぞ」 「はーい」 アドナの作ってくれた格好いい衣装を見に纏いパーティーへやってきた。パーティー会場は俺が想像していたものより大きくて思わず顔が引きつる。 「私は少し挨拶をしなければならない、ついてきてくれるか?」 「うん、俺はルシウスのお嫁さんだもん」 ルシウスの腕に手を絡める。満足そうに笑ったルシウスは俺の頰に一度キスを落としてから歩み始める。 そして歩いて行った少し先に真っ黒い耳と尻尾をした目が切れ長の格好いい獣人さんがいてルシウスにこっそり「あの人は誰?」と聞いてみる。 「あいつは···」 「やあ、ルシウス」 少し距離があったのに、どうやってここまでそんな一瞬で来れたのだろう。目の前にいるさっきの格好いい獣人さんがルシウスをみて目を細めた。 「···ああ、久しぶりだな、ラビス」 「本当に久しぶりだね?何でか俺の行くパーティーに君は現れないからね。ところで最近人間を娶ったって噂を聞いたけど、この子がそうなの?名前は?」 名前を聞かれて答えようと思ったのにルシウスの背中に隠されてラビスさんを見ることもできない。 「お前に教える義務はない」 「堅いこと言うなよ。ほら、人間ちゃーん、出ておいで?」 「今日お前が来ると知っていたなら来なかったのに···」 「まあ、俺が来ることは秘密にしていたからね」 ルシウスの嫌味たっぷりの言葉はラビスさんには通用しないらしい。もし俺がそんなこと言われたら悲しくなっちゃう。 「ルシウス、そんな言い方しちゃダメだよ」 「いいんだ、こいつはそういう相手だ」 いつもの柔らかいルシウスの笑顔は今はなくて、ただラビスさんを睨んでいる。 「ねえ人間ちゃん」 「は、はい」 俺の背後にいつの間にかやって来ていたラビスさんはその長い腕で俺を抱き寄せてきて、思わず肩が上がる。 「ラビス!!」 ルシウスが大きい声を出すのなんて気にせずに俺の耳元に口を寄せた。 「──────────?」 「···っ、」 低い低い声が俺の脳内を犯すように耳から入ってきた。 その言葉はまるで呪い。 体がピシッと動かなくなって息をするのでさえ、一瞬忘れていた。 「離れろ!」 「はーいはい、じゃあね、2人とも」 ラビスさんは俺達からサッと離れてどこかに消える。 それでもまだ体が動いてくれなくて、ルシウスに抱き寄せられ何かを問われるけど答えることができない。 途端、顎を掬われルシウスの目が俺の目を捉えた。 「レヴァン、ちゃんと私の目を見ろ」 「···ルシウス」 「何を言われたのかはわからないが、あいつの言うことはほとんど嘘だと思え。」 「で、でも···ルシウス、あの···」 「何だ?」 こんな所でさっき言われた事を言っていいのかわからなくて、やっぱりやめておこうと首を振る。 「何でもない。あ、挨拶行かなくちゃね」 「ああ···。レヴァン、無理するなよ」 「わかってる。でもルシウスの知り合いとは仲良くしておきたいから、頑張るよ」 そう言ってニコリと笑う。 作った笑顔は偽物かもしれないけど、今頑張りたいっていうのは本当の気持ち。 最も、ラビスさんとはもう仲良くなれそうもないけど。

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