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第35話

そして散々に抱かれた後、ルシウスに抱きしめられながら涙を流す。 「すまなかった」 「···もう、いいよ」 「もう少ししたら、風呂に行こう」 「···ルシウス」 「何だ」 ルシウスの胸に擦り寄って熱い息を吐く。 ビクッと震えたルシウスは俺の顔を不安そうな顔で覗き込んだ。 「ラビスさんと、何でそんなに仲が悪いの···?」 「···ラビスの話はしたくない」 「ほら、ルシウスにだってしたくない話があるでしょう」 「っ、そ、それは···!」 「責めてるわけじゃないし、別に怒ってるわけでもないから、そんな顔しないで」 グラグラ揺れるルシウスの瞳。 大丈夫という意味を込めてキスをすると俺を強く抱きしめて息を吐いた。 「───···ラビスは、昔から私のものを奪っていくんだ」 「奪う···?」 「ああ、私の大切なものを、簡単にな」 「だからラビスさんが嫌いなの?」 「大嫌いだ、今日だってレヴァンがラビスに取られるんじゃないかと思ってっ!」 抱きしめる力が強くなる。 苦しくはあるけど、まだ我慢できる程度、その腕から逃げようとは思わない。 「ラビスの姿は見たくないと今まで避けてきたんだ、なのに今日、見られてしまった。私が、最も大切だと思っているレヴァンを連れているところをな」 「···俺がラビスさんに取られないか、心配なの?」 「できるならレヴァンをここに閉じ込めたい。だがそれは嫌だとこの前言われたからな」 「そんなに不安なら、1週間くらいはいいけどね」 「1週間でラビスの心が変わる気はしない」 どうしようと焦るルシウスの姿は貴重だ。 いつも誰の前でも大らかに優しい姿しか見せないのに、いや、ラビスさんの前ではそんなことないけれど。 「あのね、ラビスさんには、"ここは人間が来る場所じゃない、早く村に帰れ"って言われたんだよ。そんなに気にすることじゃない」 呟くように言うとルシウスは慌てて俺の体を離して至近距離でじーっと目を見つめられた。そんな目で見られたら隠していることがバレそうで、気持ちがぐらっと揺れる。 「何か、隠し事をしているな」 「な、なんで···」 「レヴァンのことならわかる。」 髪を撫でられて鼻にキスされる。 鼻の奥がツンとなって涙が出そうになったのを我慢してグッと目を閉じる。 「もう1つ、言われたことがあるんだけど···それを話すのは、ちょっと、まだ怖いんだ、だから···」 「わかった、待とう」 「ありがとう」 大きくて温かいルシウスの手を掴み、小さく笑った。

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