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第36話

朝、目を覚ますとルシウスの姿はもうなかった。 ゆっくり起き上がって部屋を見渡してもルシウスはいない。仕事かな。と特に何も考えることなく朝ご飯を食べる為にベッドから降りて部屋を出る。 「レヴァン様」 「あ、フィオナさん」 「部屋から出ないでくれとルシウス様からの命令です」 「何で···?」 「···ラビス様がいらっしゃっております。」 眉を寄せるとフィオナさんは溜息を吐いた。 「食事を用意しますので部屋にいてください。絶対に出て来ないでください。」 「···はい」 「···一応、兵士に監視してもらいます」 「えぇー!!やだやだ!何で!」 「あなたは隙さえあれば部屋から出そうなので。」 結局すぐに兵士が2人やってきて扉の前に立っている。俺は別に何もすることはないから部屋から出ようと思わないけど、監視されているっていうのはやっぱり嫌だ。 「レヴァン様、食事です」 「···フィオナさん」 「部屋からは出しませんよ」 「何も言ってないのに!···ねえ、ルシウスは今まで、ラビスさんに何を取られたの?」 「···私からは話せません。ルシウス様に聞いてください、聞けるものならね」 「フィオナさんて意地悪だね」 「今更気付かれたんですか?」 口元だけでニヤリと笑ったフィオナさんが「ほら、早く食べてください」とご飯をちゃんと食べるようにと促してくる。 「···ラビスさんはルシウスが好きなのかな」 「どうでもいいことです」 「よくないよ、だからルシウスが大切にしてるものを奪ってそれの何がいいのかを考えては自分がそうなるようにって考えたりとか──···」 「あの人がそんな面倒なことをするはずがありません」 「わからないよ、そんなこと」 スープを飲むと美味しくて口角が上がった。 フィオナさんは相変わらず難しい顔をして俺の近くに立っている。 そして食器の音しか聞こえないほど静かな時間が訪れた時、ルシウスの怒鳴り声が聞こえてきた。 「え、なにっ?」 「見てきます」 部屋から何事かと出て行ったフィオナさんは驚いた声を上げて急いで扉を閉めようとする。けれどそれよりも先に黒い何かが入ってきて俺のきている服を咥えたかと思えば窓から飛び降りた。 「ええっ!!?何!?」 「昨日ぶりだねぇ、人間ちゃーん」 「ら、ラビスさん!?」 「そうだよ。って、あーあ、ルシウスが追いかけてきてる。まあ、この距離だと逃げ切れるかな」 「ラビスさん!」 「なーに」 「降ろして!」 服を脱げば逃げれるんだけど、今のこの速さで走った状態でそんなことをすれば打撲だけじゃ済まないだろうと思ってできない。 「今俺が止まったらルシウスに噛み殺されるよ。そんなこともわからないの?さすが人間」 「そうならないように説得しますから!」 「いらないよそんなの。とりあえず俺の邸に連れてく」 「···スープ、まだ飲んでる途中だったのに」 ルシウスが少し後ろから追いかけてきてるのがわかった。けれどなかなか追いついてこないのはラビスさんが意外にも俊足だからだろう。 「ラビスさんって、何の獣人?」 「黒豹だよ、だから獅子のルシウスと真剣に戦えば負ける。」 「だから逃げてるの?」 「そう。···ってうるさいな、少し黙りなよ」 そう言われて口を両手でムグッと押さえた。

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