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第45話

「きっと、村の人達はこの感染を無くそうと私を殺しにくると思うの」 「え···?」 「だって、みんな自分が大切だもの」 クスクスと笑った母さんはその笑みに似合わない顔をして俺に「お願い」と小さく言った。 「もし、ここに、村人が来て私を殺そうとしたら、その前にレヴァンが私を殺して」 「な、に言ってるの、やだよ」 「お願い、どうせ殺されるなら、心から大切に思う人の手がいい」 「母さんっ!」 母さんは静かに涙を流して俺に「お願い」と何度も言った。返事をせずに家を出て畑の前でしゃがみこむ。 「···やだ」 目の前が真っ暗になったような気がして、呼吸をするのすら難しい。考えることをやめて目を閉じると一度全てを無かったことにしようとしているのか抗えないほどの睡魔がやってきて、その場にコテっと倒れた。 「···嫌だ」 もし、仲の悪い家族なら、こんな思いをせずに済んだのだろうか。目の前に植えてある母さんと一緒に植えた野菜を最後に目を閉じた。 *** ジャリ、ジャリ、と砂を踏みつける音が近くで聞こえて目を開ける。空はとっくに真っ暗になっていてそれなのに誰がいるの?とじーっと暗闇を睨みつけると家に入る村人達の姿が見えて慌てて立ち上がり家に入る。 そこでは母さんが村人達に何か言い合いをしていた。 村人達は俺の存在に気付いてないようで、母さんには見えないように隠してある刃物が俺のいる場所からは見えた。 今日、この場所で母さんを殺すつもりだ。 そう思うと許せなくなって台所にあったナイフを静かに掴む。 それと同時に村人が大きな声を上げて隠してあった刃物を母さん目掛けて振り上げた。 急いで走って母さんのもとに向かう。 そうして、村人が刃物を振り下ろすよりも先に、母さんの心臓に向かってナイフを振り下ろした。 ふと、母さんと目が合って、その時確かに母さんは「ありがとう」と言ったんだ。

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