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第54話
城の中を探検していた。
俺の隣にはフィオナさんがいて「お勉強しませんか?」としつこく聞いてくる。
「やーだー!!」
「あ!待ちなさい!」
フィオナさんから走って逃げる。
その内にまだ入ったことにもない建物の中に入った。
ここ、何の建物だろう。少しだけいつもの場所と雰囲気が違う。そのままキョロキョロしながら歩いていると、誰かにぶつかって尻餅をつく。
「───あ?お前、ルシウスの人間じゃねえか」
「え、あ、誰···?」
「ルシウスの弟だ。···というか、何でお前がここにいる。ここは俺の場所だぞ。」
「ごめんなさい···あの、ちょっと気分転換に探検してて···えっと、あの、名前は…?」
「···アルフレッド」
「アルフレッドさん」
「早く部屋に帰れ。ここには来るな」
アルフレッドさんはルシウスとは違って黒色の髪をしている。俺とお揃いだ。
「アルフレッドさん、俺の名前はレヴァン」
「ああ。知ってる」
アルフレッドさんの手が俺の背中を押して建物から出るように促してくる。そうされると抵抗したくなるのが俺。足を踏ん張って耐えると「何してんだよ」と面倒臭そうに抱き抱えられて外に出される。
「レヴァン様!」
「あ、フィオナ」
アルフレッドさんは俺を地面に降ろしてフィオナに「おい」と低い声で言った。
「申し訳ありません。」
「いい。だがもう二度と俺の場所に入れるな」
「はい。」
アルフレッドさんの低い声はちょっと怖い。
体をアルフレッドさん方に向けて「ごめんなさい」と言えば小さく口元だけで笑って「ああ。もう来るなよ」と言って建物の中に消えていった。
「───レヴァン様」
「は、はい」
「ここにはもう二度と入ってはいけません」
「何で?」
「アルフレッド様がそれ望んでおられるからです。」
フィオナがそう言うから、仕方なくこれからは気をつけようと思った。最後にもう一度だけ建物を見ると俺をこっそり見ている一つの影。
「······あれって人じゃないの?」
「···あの方はアルフレッド様のものです。」
「こっちに来るよ?」
「え···」
少し赤みのかかった髪をしてる男の子が俺の方にやって来る。目の前に立ったその子は不思議そうに俺を見る。
「······何で、人間がいるの?」
「えっと···俺はルシウスと結婚していて···」
「ルシウス···ああ、アルのお兄さんか。名前は?」
アル?ああ、アルフレッドさんのことをそう呼んでいるのか。
「レヴァンです。君は···?」
「俺はジーク!」
ジークと話していると、アルフレッドさんの入っていった建物から「ジーク!!」と大きな声が聞こえてきた。
「あ、アルが呼んでる」
「ジーク様、早くお戻り下さい」
「はぁーい。でもね、アルってば酷いんだ。やめてほしい時にやめてくれないから、ほらみて、俺の足まだガクガクしてるの」
「···ジーク様、アルフレッド様がこちらにまるで鬼の形相でやって来ておられますが」
「じゃあ逃げようかな!ね?レヴァン!一緒に行こう!!」
腕を掴まれたと思えば勢いよく走り出すジーク。
後ろを振り返れば大きな黒い獅子がこっちに向かって走ってくる。怖い。
「じ、ジーク!待って!」
「足が死にそうだよぉ」
「止ま──···」
黒色が俺たちを通りすぎて前に立つ。
その風を切る速さと黒色の美しさに鳥肌が立った。
「捕まえた」
「···また、捕まっちゃった」
「お仕置きが必要だな」
「···ねえ、アル抱っこして。もう立ってられない」
「無茶して走るからだ」
アルフレッドさんは獅子の姿から人型に戻ってジークをお姫様のように抱っこする。
「ジークが迷惑をかけたな」
「いえ···」
アルフレッドさんとジークはあの建物に消えていく。
俺の後ろにいつの間にかやってきていたフィオナは「ルシウス様に報告しないと。」と焦ったように言った。
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