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第55話
「───と、いうことがありまして···」
「成る程。アルフレッドは何も言って無かったか」
「もう二度と来るなとだけ。」
ルシウスに逃げないようにと抱きしめられながらルシウスとフィオナさんの会話を聞く。
「ねえねえルシウス」
「何だ?」
「アルフレッドさんとジークは何であそこから出てこないの?俺、初めて会ったよ」
「···アルフレッドとは色々あってな」
「でも、優しそうだったよ」
「レヴァンは何も知らなくていい」
目をルシウスの大きな手で覆われる。
何も知らなくていいなんて、そんなことあるわけがないのに。
「···じゃあやっぱりもう勉強しない」
「それはいけません!」
フィオナさんが何を言ってるんだとでも言いたげな目を向けてくる。
「何も知らなくていいなら、勉強もそうだもん。俺、何もしない」
ルシウスの手を払って1人がけの椅子に腰を下ろし、腕に足を抱える。
「···レヴァン、それは我儘というんだぞ」
「でも何も知らなくていいんでしょ?」
「それとこれとは話が違う」
「知らないよーだ。もういい、散歩いってくる」
幼稚だってことはわかってるけど、何も知らなくていいとか、そんな言葉は欲しくない。
部屋を出てルシウスの部屋からなるべく遠いところに行こうとするとオスカーさんに会った。
「レヴァン様、何をされておられるのですか?」
「散歩!」
「ルシウス様は?」
「部屋にいるんじゃない?」
「···喧嘩でもされましたか?」
「喧嘩はしてないよ。ただ、嫌だなって思っただけ」
オスカーさんと話をするのもそこそこに走り出す。
城の外に飛び出せばワクワクと高揚感が抑えきれない。
「どこか行きたいなぁ」
「レヴァン様、いけませんよ」
「あれ、オスカーさん。追いかけてきたの?」
「はい。ルシウス様も心配されます。どうかお部屋にお帰りください」
「じゃあ、"俺の"部屋に帰る。誰も入ってこないで」
「畏まりました」
ルシウスに与えられていた部屋に帰ってベッドに横たわる。
またジークと話をしたいなぁ。なんて思いながら。
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