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第58話

アルはお花とかすぐに壊れてしまいそうなものに触れるのが苦手ならしい。 俺の隣に俺と同じようにしゃがみこんで、花壇の土を弄る俺の真似をして土に触れるアルだけれど、沢山咲いている花を傷つけないようにと緊張してるみたいで、いつもの堂々とした感じや、俺様のような感じは全くなくて、むしろその手は震えて、何かに怯えてるようにも感じる。 「アル、このお花可愛いよね」 「え、ぁ···ああ。そうだな」 「俺とアルの部屋に飾ったら可愛いと思わない?」 「可愛い···?」 「うん。」 アルは可愛いがあまりわからなかったようで首を傾げている。いつもの姿からのギャップでアルにも可愛いなんて思ってしまった。 クスッと笑うと眉を寄せて「何だ」と聞いてくるから、慌てて首を振って、勢いよく立ち上がり土で汚れた手を洗いに水場に向かい走る。 「ジーク、急に走るな」 後からそんな小言を言われたけど気にしない。 アルの大きな体に飛びつくとちゃんと受け止めてくれた。 「ねえ、レヴァンとお話したい」 「············」 「俺と、アルと、レヴァンでお話するの。楽しそうじゃない?」 アルの目を見ながら笑ってそういうと、少し視線をそらして頷く。 「明日、ここに連れてくる。」 「本当?じゃあ楽しみにしてるね」 アルの首筋に顔を埋めると髪を優しく撫でてくれた。 一見、厳つくて怖そうなアルだけれど、話してみれば優しいし、本当に子供みたいだと思えるから全くそんなことはない。 「アル、俺の事好き?」 「···ああ。俺はお前しか要らない」 「そう。嬉しいよ」 けれど、何も知らない事は俺も、アルもいけない事だと思う。

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