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第59話

目の前にはムッとしたような表情をしたアルフレッドさんと厳しい表情をしているルシウス。 「レヴァンを貸せ、だと?」 「ジークがその人間と話したいらしい。お前に頼みたくなんかねえが、お前のものなんだろう。」 「それが人にものを頼む態度か?」 「残念ながら俺は出来のいい兄貴とは違って、ルールやマナーを教わったことすらねえんだよ」 ルシウスとアルフレッドさんの間にバチバチとした火花が見える。 いや、そんなに生易しいものじゃない。下手をすれば殺し合いでも始めるんじゃないかっていうくらい、どす黒い空気。 「で?どっちだ。その人間がこれないのなら、早くジークに伝えてやらねえと、あいつが悲しむ」 「お前にレヴァンをを渡せるか!」 「···そうかよ」 ルシウスがどうしてアルフレッドさんをそこまで嫌うのかは知らない。でもアルフレッドさんの寂しそうに部屋から出ていく姿をただ見ていることは出来なかった。 「本当に、あいつは何を考えてるんだか。」 そう言って仕事を始めたルシウスにバレないようにこっそり部屋を抜け出す。 そうして廊下を少し走った先に見えた大きな背中。 「───アルフレッドさん!」 大声で名前を呼ぶと振り返ったアルフレッドさんは俺と同じ、黒い髪。俺が嫌われた一つの理由でもある。 「俺、行く。ジークが待ってくれてるんでしょ?」 「···ルシウスはいいのか」 「はい!」 アルフレッドさんは俺を足先から頭のてっぺんまで見たあと「ついてこい」と言ってあの建物に向かい歩き出した。 この建物に入るのは二回目だ。 アルフレッドさんはさっきから一言も話すことはない。少しの気まずさを持ちながら廊下を歩き続け、ついた部屋。 ノックも何もせずにそこに入ったアルフレッドさんに次いで俺も中に入ると、ベッドにジークが寝転がっていた。 「ジーク、連れてきた」 「···アル」 ゆっくりと起き上がったジークは目元を擦り、俺を視界に入れると嬉しそうに笑う。 「こんにちは、レヴァン」 「あ···うん。こんにちは」 「来てくれてありがとう。ここ、何も無いけど、お話しよう?」 「もちろん!」 ジークとアルフレッドさんの近くに寄ると、アルフレッドさんはジークを後ろから抱きしめて、そのまま動かなくなる。 「ごめんね、アルってば人見知りなんだ」 「え···」 その見た目で?なんて、口が裂けても言えない。 じゃあさっきもここに来るまで一言も話さなかったのはそういうことなのだろうか。 「アル、この前レヴァンとは廊下で話をしたんでしょ?」 「···あれは、ただここに入らせないようにするためで···」 さっきは堂々とルシウスと言い合っていたのに、本来の姿は全く違う。なんだかアルフレッドさんにも、ジークにもより一層興味が湧いた。 「ジークとアルフレッドさんはどうして出会ったの?」 2人のことをもっと知りたい。

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