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第62話
ジーク side
レヴァンがルシウスさんを抑える姿を目に映しながら勝手に出た言葉。アルは俺の前に立って俺を守ってくれている。
「全部が全部、アルのせいじゃないよ。アルは悪いことはしてない。」
「···お前はジークだったか?なぜそう言いきれる。お前はアルフレッドの全てを知っているわけじゃないだろう」
それを言われて腹が立った。
アルの全てを知っているわけじゃない?それはそっちも同じだ。
「それはあんたもでしょ。それに、アルのことを知ろうとしないあんたに何を言われても傷つかないよ」
「···フィオナ、そいつを黙らせろ」
フィオナと呼ばれた、この間レヴァンと一緒にいた御使いさん。その人が俺に触ろうとするのをアルが止めさせる。
全身で威嚇を表したアルにフィオナさんは体をびくつかせた。
「ジーク、やっぱり俺たちは二人でいるほうがいいんだ」
「···そうかもしれないね」
アルに後ろから抱きついて、小さな息を吐く。
「アル、二人きりになりたい」
「ああ」
そんなお願いをすれば、アルは俺を抱っこしてベッドに降ろし、全員を部屋から追い出した。外からは何やら怒鳴り声が聞こえてくるけれど、俺たちの世界にそんなのは必要ない。
「アル、好きだから、沢山抱いていいよ」
「···泣いてるぞ」
「嘘。気づかなかったなぁ」
アルが俺の上に跨って優しくキスをしてくれる。
その大きな手が俺の頬に触れて涙を拭ってくれた。
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