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第63話

目に見えてわかるのはルシウスが怒ってるってこと。 部屋に帰ってきてなお、ずっとイライラしていて、そんな姿のルシウスを見るのは少し怖い。 「ねえ───」 「レヴァン、何故部屋を出ていった。私とアルフレッドの会話を聞いていただろう」 「···ジークに会いたかったから」 ジークは今もあの部屋でアルフレッドさんと2人きりだ。 「あの人間とはもう会うな」 「嫌だよ。約束したんだもん。今度は俺とルシウスが出会った時の話をするって」 「今度は?」 「うん。今日はジークとアルフレッドさんが出会った時の話をしてくれたんだ。だから次は俺の番」 勝手な事ばかりする俺にルシウスはそろそろ呆れてる。 それでもこれは俺の人生だから、俺の好きなようにしたい。 「あの2人がどうやって出会ったのか、聞いたんだな?」 「うん。」 「ならあの人間が何故ここにいるのかも?」 「アルフレッドさんがジークの村を潰したって聞いた」 「そうだ。アルフレッドは他人のことを考えずに大切な人のためならどんなことでもするんだ。けれど、そんなアルフレッドも異常だが、あの人間はもっと異常だ」 ルシウスの言っていることがよくわからなくて、首を傾げると「あの人間は」と言葉を続ける。 「潰れた自分の村を見て悲しみ嘆くこともなければ、怒ることもなかった。···ただ、笑っていた」 「笑って···?でもジークは、アルフレッドさんが憂さ晴らしに村を潰したって···だから、たまったもんじゃないって」 「人間は記憶を何でもいいように塗り替える。」 「どういうこと···?」 ルシウスの表情は険しい。 その理由は何。 「アルフレッドが村を潰したのは事実だ。だがそれを頼んだのはあの人間だ」 「ジークが···?」 「あの人間の生い立ちは知らない。だがそれは普通、してはいけないことだ。」 「そんなの、アルフレッドさんもわかってたんじゃ···」 「ああ。あいつはしてはいけないことを理解していた。けれど、アルフレッドはジークに惚れていたんだ。ジークの望むことは何でもしてやりたかったんだろう」 それで2人とも嫌われて、あの部屋に閉じこもってるのだろうか。 けれどジークはあの部屋から逃げ出そうとしていた。その度にアルフレッドさんが止めていて···ああ、もしかして。もし俺の考えが当たっているのなら、それはすごく悲しい。 「ジークがあの部屋から出ようとしてるのは、その記憶を忘れているからで、アルフレッドさんがそれを止めるのは、外に出たジークが、その事実を知る事や、誰かに傷つけられる事を防ぐ為···?」 「勿論それが一番の理由だ。だがアルフレッドは昔から一族に馴染めなくてな。母親にも絶縁されてまともな教育も受けていない。もし何かあった時、そんな自分があの人間を助けることが100パーセント出来るのかと考えたら、それは無理だと判断したんだろう。」 「でも···何でルシウスがそんなこと知ってるの?」 「私は昔、アルフレッドと少しだけ仲が良かった。すべて、その時の話だ」 少し悲しそうなルシウスの姿。 どうしてあげるのが正解かもわからずに、俺はぼんやりと宙を見てるしかなかった。

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