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第64話

アルフレッド side 綺麗な顔で眠るジーク。 その目尻からは涙が零れていて、そっと指で掬う。 ジークが記憶を塗り替えたのは、俺が村を潰してすぐのことだった。 それまでただ優しかったジークが俺に対して怒りをぶつけてきたのだ。 「俺の村を潰した」とか「大嫌い」だとか。 でも、それでもよかった。 何より、ジークに苦痛を与えていた者達を村と一緒に殺せたのだから。 ジークはよく俺のことを酷いと言うけれど、それはジークも同じだ。 今すぐにその細い首に手をかけてやりたくなるけれど、それが出来ないのは俺がジークを愛しているから。 ジークが俺に全て罪を擦り付けると言うならそれでいい。 俺はそれですら喜んで受け入れる。 けれど、いつか事実を思い出した時、ジークはどうなるのか、それだけが怖くて仕方が無い。 ジークの隣に寝転び抱きしめると、薄く目を開けて「アル···?」と甘く掠れた声で俺の名前を呼ぶ。 「眠れないの···?」 「いや、大丈夫だ」 「そう。おやすみ、アル」 俺の胸に顔を埋めて眠るジークを傷付けないためには、どうすればいいのだろう。と教育も受けていない馬鹿な頭で一生懸命考えた。

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