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第65話
あれ以来、あの2人には会えていない。
今までと同じ生活に戻ったと言った方が正しいのかもしれない。
「2人とも元気かなぁ」
呟いた俺の言葉をルシウスが拾ったみたいで「2人はあれきり部屋から出てきていないらしい」と教えてくれた。
「ちゃんとご飯は食べてるの?」
「わからない。何せ使いの者すら会えないようだからな」
「そんな···」
不安で仕方がない。あの2人はどうなるんだろう。
***
「あの2人、どうなるの」
「私はあれ以来、2度ほどルシウス様に頼まれてお食事をお持ちしました。ですが···あの部屋の中に入ることは出来ませんでした。」
フィオナさんが俺の勉強を見ながらそう言った。
「何で?」
「1度目は情事をされていたからです」
「え···ぁ、え?」
「2度目は···ジーク様に怒鳴られました。二度と来るなと。」
「何で!?」
「2度目に行った日辺りは、向こうの様子がおかしかったんです。」
手元から視線をあげたフィオナさんが俺を見た。
「朝早くでも夜遅くでも、構わずに向こうはとても騒がしかった」
「············」
「きっと、ジーク様が取り乱しておられるのです。私を怒鳴った声も、とても悲痛でした」
そんなことがあったんだ。と驚いているとガシャンと何かが割る大きな音が聞こえてきた。
「何?」
「わかりません。様子を見てきます」
フィオナさんが俺の部屋を出ていって、音のした方に向かった。俺は部屋で大人しくしてるしかなくて、でも気になって部屋の窓から外を見る。
「何があったんだろ···」
御使いさんたちが慌ただしく走ってる。
その様子を見ると大変なことが起きたんじゃないかってじっとしてはいられなかった。
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