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第68話

オスカーさんはすぐに戻ってきて俺に救急箱をくれた。 急いでアルフレッドさん達の部屋に戻ると、アルフレッドさんが部屋を掃除していて、ジークはベッドで眠っていた。その足からは赤い血が流れている。 「アルフレッドさん」 「ああ。ありがとう」 救急箱を渡すとそれを受け取り、早速ジークの怪我を診るアルフレッドさんに、本当にジークが好きなんだと思い知らされる。 「これ、全部ジークがしたんですか」 「···ああ。俺が色々間違えたんだ。ジークは何も悪くない。なのにこんな怪我までさせてしまった」 アルフレッドさんの声は静かで、落ち着いていて、どこか悲しい。 「なあ、もう一つ頼みがある」 「何ですか」 「庭に花が咲いてるんだ。これと同じ花、摘んできて欲しい」 アルフレッドさんがこれと言って指さしたのは少しオレンジがかった黄色の花。 「そのお花、好きなんですか?」 「ジークが可愛いって言った。だから飾っていたんだ」 ジークを中心に生きているアルフレッドさんに、軽く同情すら覚える。 「じゃあ、お花摘んできます」 「悪い」 部屋を出て庭に向かう。その間にすれ違う何人かの御使いさん達。 御使いさん達は皆、ヒソヒソと話している。 その内容はジークとアルフレッドさんのもので、決してここが心地のいい場所だとは思えない。 きっとジークとアルフレッドさんなら尚更、そう感じているだろう。

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