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第69話
言われた通り花壇に咲いていた黄色の花を摘んで、2人の部屋に戻るとアルフレッドさんがジークを優しく見つめていた。
2人はこんなに愛し合っているんだ、もう皆、過去の事は忘れて祝福してあげたらいいのに。
「アルフレッドさん、摘んできたよ」
「···ありがとう」
お花を渡すと少しだけ嬉しそうに笑ったアルフレッドさんが新しい花瓶にそれを挿した。
「そのお花、綺麗だね」
「···ああ」
「ジークってお花が好きなの?」
「わからない。でも···花や土を触っている時の表情はすごく優しいから、多分、そうなんだと思う」
「アルフレッドさんは、ジークが大好きなんだね」
そう言うと慌てたように俺を見て顔を真っ赤に染める。
何それ、すごく可愛い。ユラユラと揺れている尻尾が俺の足に触れた。
「···お前は、ここら辺では見かけない髪色だ。」
「アルフレッドさんと一緒の色だよ。でも俺はこの髪のせいで嫌われていたんだ。···理由はそれだけじゃないけどね」
「へえ。お前に似合ってる、とても綺麗だ。その髪色について汚い言葉を吐いたやつはきっと、その事に後から気付くだろ。お前は何も気にすることは無い」
「···アルフレッドさんは凄く優しいね。」
別にもう気になんてしていなかったのに、そんなに優しい言葉をくれるから嬉しくなる。
「俺は優しくなんてないんだ。親にすら何も教えて貰ったことがない、だから単に何でも受け入れてしまうんだ」
「それは···苦しいことも、あるね」
「ああ。その結果が、今だ」
アルフレッドさんは振り返ってジークを見る。
もうこれ以上2人の時間を邪魔するのは無粋かな。
「俺、そろそろ帰ります。何かあったらいつでも言ってください」
「ああ···助かった。ありがとう」
俺を目に映すことなくそう言ったアルフレッドさん。
静かに部屋から出るとそこには何故かルシウスがいて、心配そうに中を覗いたあと、静かにドアを閉めて俺の手を掴み廊下を歩き出す。
「あの人間は、無事だったか」
「怪我をしてたんだ。でもアルフレッドさんが手当してあげてたよ。アルフレッドさんは優しいね」
「···ああ。だがあれは優しすぎてダメだ」
「助けてあげないの?」
「···あいつが望めば助けてはやる。だがあいつはそれを許さない。俺はあいつに嫌われているからな」
自虐気味に笑ったルシウス。俺が立ち止まるとルシウスも止まって俺を振り返った。
「どうした?」
「ルシウス、部屋に帰ったらちょっとだけお昼寝しようよ」
「いや、仕事が···」
「だめ。」
「···わかった」
ルシウスが少しだけ眠たそうな顔をしている。
最近じゃルシウスも色々と忙しくてちゃんと眠っていないようだし、このままじゃまた気絶するように眠ってしまうんじゃないかって不安に思った。
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