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第72話
アルフレッド side
ジークが眠った後、風邪をひかないように布団をかけてから部屋を出た。
風呂で軽くお湯を浴びてから、外に出る。
空はもう真っ暗で、星がキラキラと明るく光っていた。
「───アルフレッド」
「···ルシウスか」
獣人なら睡眠時間を人よりも多く摂取しなければならないのに、こんな時間まで起きているなんて、それも一族を支えるものの役目なのだろうか。
「あの人間は、無事なのか」
「···ああ、今は寝てる」
昔はルシウスとも険悪なムードにもならず良く話をしていた。俺があの日、ジークの村を潰してから、それはなくなったけれど、後悔なんてしていない。
「ああそうだ。俺のところにいる召使い達、もういらねえ。お前が使え」
「···それもあの人間の為か?」
「···ジークが傷つく姿はもう見たくない」
「お前はあの人間のことを考えているのに、人間の方はお前のことを考えてはくれないのだな」
また、何もかもを知っているかのようなルシウスの発言。普段なら怒っているかもしれないけれど、今は全くイライラしない。
「お前の所の···レヴァンはお人好しだな」
「お人好し?それは違うぞ。」
くっくっと笑ったルシウスに視線をやると、その表情があまりにも優しくて、見ていられなくなって、すぐに顔を逸らす。
「レヴァンはただ、大切な者達が困っていたら助けてやりたいと思うだけだ」
「···なら、大切な者に俺とジークも含まれてるってことか?」
「そうだな。最近はずっと、お前達の話しかしない。」
思わず鼻で笑ってしまった。
それをみて眉間にシワを寄せるルシウスが「何がおかしい」と言う。
「全部おかしいだろ。俺達が大切だと?俺とジークは親や関係が近い奴らにも邪険に扱われてきた。それなのに全く関係の無い、つい最近初めて会った奴に大切に思われても、ただの迷惑だ。」
その言葉だけを吐いて、ルシウスの前から去った。
部屋に帰るとジークがまだまだ深く眠っていて、そっとその隣に寝転ぶ。
「俺には、ジークだけでいい」
そっとジークにキスをして目を閉じる。
最近色んなことがあったから体が疲れていたんだろう、すぐに眠気は襲ってきて気がつけば眠りに落ちていた。
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