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第74話
真実を話す事が、こんなに緊張する事だとは知らなかった。
風呂から上がり、部屋で茶を飲み、いざ話そうとすれば胸のあたりが苦しくなる。
「アル?」
「こ、これを聞いて、俺のことを嫌いにならないか···?」
「わかんない」
嫌いになられるのが怖い。そんなことよりもジークに伝えることが大切なのに、なかなか言葉が出てこない。
「嘘嘘、嫌いになんてならないってば。ね?」
そう言って俺の額に自らのそれをコツンと合わせたジーク。いくらか気持ちは楽になって「えっと···」と言葉を零す。
「お前が、俺と出会ったあの後に、また会ったんだ。その時お前は···誰かに強姦された後だった」
─────そう、あれは雨の日だった。
うまく一族に馴染めなかった俺は、いつも通り森にいた。
その時悲鳴にも似た声が聞こえてきて、その声を頼りに森の中を歩く。
もし誰かが困っていたなら助けてあげようと思ったから。だってそうすれば少しくらい俺の母親も俺を認めてくれるだろう、って。
結構な距離を歩いた先、前に一度会ったことのある人間───ジークが地面に倒れていた。ジークに寄る前から気付いたのは独特の男の臭い。
近付いて見てみればギタギタにされた服、そして動けずに泣いている姿。
雨に打たれて風邪でも引くのは辛いだろうと、ジークに近づいて声をかけた。
「おい、風邪を引くぞ」
「·········ぁ」
「森の中なら木と葉が屋根になってくれる。少し運ぶからな」
「···ぉ、願い···俺、を殺して···」
「馬鹿なことを言うな」
ジークを殺そうと思えば、殺せた。
けれど見捨てずに殺そうとしなかったのは、俺がその時すでにジークに一目惚れをしていたからだ。
木の下に運んで着ていたローブを掛けてやる。
涙を流しながら震えて俺のローブを強く掴むジークをどうしてやるのが正解なのかわからず、とりあえず邸につれて帰って体を温めてやらないと、これは本当に風邪をひく。
ローブで包んだまま、ジークをもう一度抱えて走って邸に戻った。
邸の門を入った所、そこには数人の召使いを背後に立たせるルシウスが立っていて、俺を見て眉を寄せる。
「アルフレッド、何だそいつは」
「少しな。風呂に入ってくる」
「ああ」
召使いに風呂の準備をさせて、冷えきったジークに急いで暖かいお湯をかけた。
「っ、ぅ···」
「大丈夫か」
「あ···いや···出てくる···」
「出る?何、が···」
言葉の途中でジークの後孔から白いドロッとした液体が出てきて、なるほど。と理解する。
「掻き出すぞ」
「いやだ···やめて、怖いよぉ···っ」
「大丈夫だ、痛いことはしない」
俺に縋るようにしがみついてくるジークを邪険に扱えるはずがなく、痛くしないようにと注意を払いながらそっと、その後孔に指を入れた。
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