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第76話

「それで、お前の村だけど···」 「うん」 *** 目を覚ましたジークは、痛む身体を動かす事も出来ずに、ベッドの中で泣いている日々。 もうあの日から3日は経ったけれど食事すらまともに取ろうとしないから、召使いから預かった飯を無理矢理口を開けさせて食べさせていた。 「ぅ···ぐ······も、もういらないっ!」 「ダメだ、食え」 「っ、うぅ···!」 「ちゃんと飯を食って力をつけないと、お前をそんなふうにした奴らに仕返しも出来ねえぞ」 「······仕返し···?そんなの、力がついたとしても無理だよ」 「そんなことないかもしれないぞ。···まあここには好きなだけ居ればいい。お前が願うなら俺はお前の味方にもなってやる。」 つい、ポロッと出た言葉にジークは驚いて、そして俺自身も驚いた。 「···ねえ、何で俺のこと助けてくれたの」 「そりゃあ、一度会ったことがあるし」 「その時もだよ。だって獣人は人間を奴隷にしたりするって聞いたよ」 「···さあ、何でだろうな。ただの気まぐれかも」 本当は理由をわかっていた。 でもそんなの、恥ずかしくて言えない。 一目惚れをした、だなんて。 「名前は、なんて言うの?」 「アルフレッド。アルでいい」 「じゃあ、アル。俺はジークだよ」 「知ってる。前に会った時聞いた」 「そうだっけ?」 ジークは少しだけ笑って、俺に向かい「よろしくね、アル」と言った。

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