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第77話
それから数日。
もう動けるようにも、飯を食うようにもなったジークが「お願いがあるの」と言って俺の腕を強く掴む。
「何だ」
「···俺の村、潰して」
「は?」
にっこりと綺麗な笑顔でそう言ったジークに目を見開く。
村を潰して、なんてお願いをされると思っていなかった。
「あの村は、潰さないといけないんだ」
「何で···」
「あの村に元々親はいないし、思い入れもない。俺を襲ったのはあの村の奴らだし、あんな奴らが居たんじゃ他の村人達も安心出来ないよ」
「それは···それは、そうかもしれないが···」
「アル、アルは俺の味方になってくれるんでしょ?」
前に言った言葉が蘇る。
ジークの目は何やら決意を決めたようなそんな目で、今更首を横に振る事は出来ない。それくらい、俺は今、お前に溺れてしまっているから。
「────わかった。」
「ありがとう、アル」
ジークが俺に飛びついてきて、それを受け止める。
顔を上げたジークが、俺にキスをした。その意味は一体なんなのかわからない。ただ固まることしか出来ずにジークが嬉しそうに俺の首に顔を埋めるの受け入れた。
***
ついにその日がやってきて、俺はジークと一緒に邸を出てジークの住んでいた村の近くで、火を起こした。木の先端がメラメラと燃えて、それを持つジークと村に近づく。
獣人の俺の姿を目にした人間は怯えて逃げ出そうとするものもいれば、敬意を払い頭を下げる者もいる。その中にはもちろん子供がいて、これから俺が何をするかなんて、その純粋な心からは答えが導き出せるはずもない。
「アル、あいつらだ···」
「···わかった。」
3人の青年達。
そっとそいつらに近づくと目を見開いて動かなくなった。
「お前らが、ジークを傷つけたのか」
俺の言葉にピンと来たのだろう。逃げ出そうとしたそいつらを獅子の姿になって逃げ出せないように追い詰める。
「あ、謝る!謝るから、許してください!」
3人とも地面に頭をつける。
こんなものでジークの受けた屈辱が晴れるわけがない。
「お前らのせいで···」
「ヒィ···ッ!」
お前らのせいで、ジークは傷つき、この村も消える。
悲鳴をあげた男の体に噛み付いた。
バキ、だとかそんな音と一緒に悲鳴が上がる。
口の中でもがいていたそいつは次第に力を失い、最後には動かなくなった。
地面にそれを吐き出すと血が溢れ出て、周りにいた村人達と残りの2人が大声をあげ逃げ出した。
2人を追いかけて、1人を足で踏み、もう1人をさっきと同じように殺していく。久しぶりに味わう優越感に気分は上がる一方だ。
「───アル」
ふと、名前を呼ばて振り返るとジークが立っていた。
まだ息のある最後の1人がジークを見て「助けてくれ」と言った。
「···俺があんたにそう言っても、あんたは助けてくれなかった」
「た、のむ···頼むよっ」
「俺にあんな屈辱的な思いをさせてくれたんだ、俺はそれ以上の思いをお前らにくれてやる」
そう言ったジークの表情は何も無い。
最後の1人は涙を流している。そうしてそいつに近づいたジークが、いつの間にか用意をしていたナイフを振り上げ、そいつの胸を目掛け突き刺した。
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