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第78話
俺にも、そしてジークにも赤い血が飛んだ。
顔についた赤がジークの美しさを際立たせているように見えた。
火を持っていたジークはそのまま、どこかの木でできた家にそれを投げる。
「よく燃えてるね」
「···そうだな」
これがしてはいけないことだということを頭では理解していた。
煙がもくもくと上がる。俺の背中に乗ったジークとそのまま村を出て、村が燃えていく様子を眺めた。
煙のせいで空は黒くなり、炎のせいで少し赤くなる。
悲鳴が鳴り止まない、俺の背中から降りたジークを見れば笑顔でその様子を見守っている。
「綺麗だね、アル」
そんな言葉を言ったジーク。
その直後ルシウスの匂いがしてきた。
俺達の元にたどり着いたルシウスが、ジークと俺に飛ぶ血を見て目を見開く。
「お、前たち···何をしてる」
「誰?」
ジークがルシウスを見て目を細めた。
「俺の兄貴だ」
「へえ。アルの」
その会話をしただけで、またジークは赤い方へ目を向ける。綺麗に、儚げに笑って、気づけば俺もそんなジークを見て口元が緩んでいた。
後始末は全てルシウスがやってくれた。その間俺達は部屋に監禁された。そしてその後、これでもかというほど怒られたし、結局母親とは絶縁状態になり、俺は邸の奥にある離れにジークと2人で暮らし始めた。
「アル」
「何だ」
「触って」
あの日キスをしてから、俺たちの距離は近くなった。
ジークに頼まれてその肌に触れると嬉しそうに笑う。
「好き」
「ああ。俺もだ」
例えどんな理由だったとしても、一目惚れをした相手に好きになってもらえたことが嬉しくて。俺の好きになった人に愛情を返してもらえるのが嬉しくて。
俺の世界にはジークだけになった。
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