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第79話
ジーク side
アルが全てを話してくれた。
俺の記憶とは全く違う事実に、どれだけの残酷なことを今までずっとアルにしてきたんだろうと思う。
「お前をここから出したくなかったのは、その真実を知られたくなかったんだ」
「なんで···」
「お前が傷つくのは見たくない」
アルに抱きしめられてその熱に許されてるんじゃないかと錯覚しそうになる。
「俺···散々アルに酷いって言ってたけど、酷いのは俺だったんだね」
「違う、ジーク聞いてくれ」
「きっとアルは俺のこと、殺したくて仕方なかったんじゃない?」
「違うっ!!」
引き離され、肩を掴まれる。その力があまりに強くて思わず眉を寄せた。
「そんなこと思ってないっ」
「アル···」
「確かに、初めはどうしてだって思った。何で俺がお前に酷いなんて言われなきゃなんねえんだって。···殺してやりたいって。でも、それは憎しみからじゃねえ、早く二人で一緒に楽になる方法だと···思って···」
アルの綺麗な漆黒の瞳が揺れてぽたぽたと涙が落ちる。
ついつい手を伸ばしてアルの顔を両手で包んだ。
「泣いてる姿、初めて見た」
「当たり前だ···お前の前で泣いたことなんてねえよ」
アルの涙につられて泣きそうになる。
視界がだんだんと歪んできて、無理矢理に笑顔を作るけどアルにキスをされるともうそれは無理だった。
「なあ、1人でこれ背負うのは···もう、疲れた」
「···うん」
「だから──」
「これからは、俺も背負うよ。ちゃんと、償う」
俺のしたことは許されることじゃない。
だから一生背負っていく。アルと2人で。
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