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第80話

ある日ルシウスの部屋にいると、突然アルフレッドさんとジークがやって来た。 ルシウスはジークが一緒に来たことに驚きを隠せないらしい。 「何だ」 なのに平然を繕うから少しおかしかった。 「ジークが話があるって」 「···えっと」 アルフレッドさんの背中に隠れていたジークが前に出てきて、ルシウスに向かって勢いよく頭を下げた。 それにはアルフレッドさんも驚いていて目を見開いている。 「俺、いっぱい迷惑かけて、それから···失礼なことばっかり言ってすみませんでした!!」 状況がうまく飲み込めない俺はルシウスとジークをキョロキョロと何度も見る事しか出来ない。 けれどルシウスとアルフレッドさんはもう理解をしたのか、アルフレッドさんもルシウスに向かって頭を下げる。ルシウスは一つ息を吐いた。 「その様子じゃ、思い出したんだな」 「うん···じゃなかった、はい」 「···別にどちらでもいい。思い出した上で私に謝るということは、してはいけないことをしたと反省してるんだな?」 「はい···」 ルシウスは2人に頭を上げさせて「罪には問わない」と言った。 「獣人が人間を殺しても罪にはならない。だからアルフレッドには罰は与えない。だが、ジークを一生をかけて支えるんだ。···ああ、あと···これからはしっかりと学べ。今更だが、お前にはフィオナをつけて学ばせるからな」 「···え」 「え、じゃない。お前は俺の弟だ。もし俺がいなくなった時、この一族を動かすのはお前だ」 「···はい」 「それから、ジーク」 ルシウスに名前を呼ばれて体をビクッと震わせたジークがゆっくりルシウスと視線を合わせた。 「その心の傷が癒えたのなら、これからは外に出て、レヴァンもよく暇だと言っているから、レヴァンと遊ぶのもいい、学ぶのもいい、部屋にこもっているだけの生活はもう止めろ」 「はい」 「アルフレッドも、もう外に出ることをもう許してやれ」 2人は頷いて、それから少し話をして出て行った。 ルシウスは少し疲れたのか、座ってた椅子の背凭れにもたれ掛かった。 「ルシウス」 「どうした」 「さっき聞き捨てならない言葉があったんだけど」 「何か変なことを言ったか···?」 不思議そうに俺を見たルシウス。 近づいて膝に乗り座れば、腰に手が回されて落ちないように支えてくれる。

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