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第82話
暖かい太陽が俺と、俺の後ろに立っていたジークに当たる。
ジークはどうやら眩しいようで、目を細めてさらに、地面に視線を下げていた。
「ジーク、これ好き?」
「···花?好きだよ。多分アルも好きなの」
「じゃあこの花摘んで、アルフレッドさんに渡そうよ!プレゼント!」
「プレゼント···?」
「うん!どの花がいい?」
「えっと···じゃあ、これ···」
ジークが指を指したのはピンクの花。
アルフレッドさんとピンクの花ってちょっと似合わない気がするけど、ジークが言うんだからそうでもないのかも。
花を摘んでジークに渡すと嬉しそうに微笑む。
「アルフレッドさん、今何してるの?」
「今は確か···フィオナさんと勉強してるよ」
「フィオナさんなら優しいから、途中に入っても許してくれるよ!ねえ行こう!」
「えっ、あ···!」
ジークの腕を掴んで走る。
アルフレッドさんがいる筈の部屋にノックもせずに突入すると、中にいたフィオナさんとアルフレッドさんが驚いて目を見開く。
「いた!」
「レヴァン様、ノックもせずに入るのは──」
「アルフレッドさん!ジークが渡したいものあるって!」
フィオナさんの言葉を遮って、ジークの背中をポンと押す。
「渡したいもの?何だ」
「えっと···これ···花、咲いてたの···綺麗だったから、アルに···」
「············」
ジークがアルフレッドさんの前に花を差し出した。
アルフレッドさんはまた驚いてるのか、それとも困惑してるのか、その花を受け取ろうとはしない。
「あ···いらない···?」
「いや、違う、そうじゃなくて」
アルフレッドさんはジークの花を持つ手に触れて、優しく笑った。
「これは、お前が持っていた方が綺麗で、可愛いよ」
「何で···?アルも、花似合うよ!俺知ってるもん、アルが花好きなこと!でも壊しちゃいそうで怖いんでしょう?」
「············」
「ねえ、萎れたり、壊れたり、そうなったらまた一緒に種を撒こうよ。それから花壇のお手入れをしてね、一緒に育てるの」
アルフレッドさんの胸に押し付けるように腕を伸ばし、花を渡したジーク。
「ジーク、ありがとう」
「···ううん」
「俺、これ、大切にする」
2人が笑顔になった。ジークはあまり元気がなかったから、その姿を見れてよかった、とそう思ったのに。
「アルフレッド様、"俺"ではなく"私"です。先程も申し上げましたよね?」
「···はい」
アルフレッドさんがフィオナさんに怒られた。
背中を丸め視線を下げるアルフレッドさん。そんな姿を初めて見た俺と、ジークは思わずケラケラと笑った。
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