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第88話

「───行ってくる」 「···うん」 朝早く、ルシウスが邸の門の前に立った。 俺は最後まで離れたくなくて、ルシウスと手をギリギリまで繋いでいた。 「2週間我慢するから、約束だよ。御褒美ちょうだい」 「ああ、わかってる」 ルシウスが背中を屈めて俺にキスをしてくれた。 余計寂しくなっちゃったけれど、仕方が無い。 手を離して、一度ルシウスに抱きついてから、パッと離れて「いってらっしゃい」と手を振る。 ルシウスは微笑んで、俺に背中を向けてオスカーさんや、その他のお使いさんを連れて出て行った。 「さあ、レヴァン様、お部屋に戻りましょう」 「···フィオナさん」 「はい」 「···寂しいよぉ」 泣きそうになるのを我慢する俺にフィオナさんは呆れたように息を吐く。 「永遠の別れではないのですから」 「わかってるけど···」 「ほら、そんなに寂しいのならアルフレッド様とジーク様のところに行きましょう」 「···うん」 フィオナさんの手に押されてジーク達の部屋に向かった。 「あ···おはよう」 「おはようございます。アルフレッドさん」 「···ルシウスは行ったんだな。」 「うん」 ジーク達の部屋の扉をノックすると出てきたのはアルフレッドさんで、ジークはまだ眠ってるみたい。フィオナさんはすぐに仕事をするからって帰って行っちゃった。 「お前も朝早くから起きてたんだろ。まだ少し寝てろ。こっち来い」 「うん」 アルフレッドさんが俺の腕を優しく掴んで、ジークの眠るベッドに連れてきて、寝かせてくれる。 「俺は少しやることがあるから、部屋を出る。」 「うん」 「腹が減ったらそこにあるの食えばいいし、まあ何でもしてくれていいから···あ、でもジークには手を出すなよ」 「そんなことしないよ!」 アルフレッドさんが少し笑った。 ああわかった。もしかしてアルフレッドさんは、俺をちょっとでも元気づけようとしてくれたのかもしれない。アルフレッドさんは本当は凄く優しい人。 「じゃあな」 「うん」 アルフレッドさんはルシウスの弟だから、優しく笑うところとか、少しルシウスに似てる。 アルフレッドさんが出ていってから、ジークに抱き枕にするかのように抱きついて、俺も少し眠たかったからそのまま目を閉じた。

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