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第93話
少し歩いた先にあったのは比較的緩やかな川で、そこに泳いでいる魚をジークが捕まえようとする。
「落ちるぞ」
「でもあの魚捕まえたい」
「風邪をひかれても困る」
「ひかないもーん!」
川に飛び込んだジークを見てアルフレッドさんは溜息を吐いた。
フィオナさんが俺を見下ろしてるのがわかる。
「何?」と顔をあげると「あなたはいいのですか?」と川を指さして言った。
「俺、魚は食べるのは好きだけど、捕まえるのは苦手」
「ここの川は綺麗ですから、塩焼きにでもして食べたら美味しいですよ。捕まえないと出来ませんけど」
「···食べたい」
「なら、行ってらっしゃい」
背中をポン、と押されて川に足をつけると意外と冷たくて「ひっ」と声が出る。
「フィオナさん。これ、すごく冷たいよ」
「水ですからね。」
フィオナさんと話していると思い切り頭から水がかけられた。「ひゃぁぁっ!」と声を出す俺を見て笑うジーク。
水をかけてきた犯人は間違いなくジークで、仕返しだ!と水を掬いバシャっとかけてやる。
「きゃー!冷たい!」
「俺も冷たかった!」
「でも気持ちいいよ!ねえ!あそこ魚いる!」
ジークは楽しそうにそのまま、静かに魚に近づいて背後から捕まえていた。あれを塩焼きに···ジュルっと涎が出る。
「ほら、レヴァン様も頑張って」
「うん!」
フィオナさんに応援されて、結局俺はその後、自分の分とフィオナさんの分で2匹捕まえたのだった。
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