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第96話

廊下を歩いている途中、召使いに会った。 俺を見て少しも驚いたりせず、上品で綺麗な礼をする。 「なあ」 「はい、何でしょう」 「レヴァンが今寝てるんだ、1人だと起きた時に寂しく思うかもしれない。」 「そうですね、では恐れながら、私が様子を見ておきましょう」 「頼む。···お前、名前は」 ネコ科の獣人。 俺はそいつを見るのが初めてで、もちろん、名前も知らない。 「セシリアと申します」 「セシリアか。頼んだ」 「畏まりました。」 優しく笑い、俺が今来た道をセシリアが歩いていく。 それを少し見送って、それからジークの待っている部屋に行くと「アル、アル···」と俺の名前を弱々しく呼ぶ声が聞こえてきた。 「アル、どこ行ったの」 「ここにいる」 側によって顔を見せると「隣にいて」とジークが自分の隣をトントンと叩く。 そこに寝転べばジークが俺に擦り寄ってくる。 「アル···しんどいよ」 「ああ、だから寝ろ」 「寒い寒いよ、アル」 抱きしめてやるけど、ジークはまだ寒いを繰り返す。 さっきよりましになったとはいえ、体はこんなに熱いのに。 「ジーク、すぐに毛布取ってくるから待ってろ」 「やだ···やだもん···」 「やだつったって、寒いんだろ」 「やだ···、アルが居てくれたらいいもん」 寒いくせに俺がいればいいとか、それは違うと思うんだが。ジークの手が俺の服を掴み、そのまま離してくれなさそうなので、とりあえずジークを抱きしめて眠らせることに努力した。

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