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第99話
「金儲けをしようとしてヘマをしたお前が最悪な状況に陥りそうなのを、"俺"がフォローをしてやってるんだ」
服を汚されたことも腹立たしい。
嫌味をぶつけてやるとアーサーはイライラした様子で椅子を蹴り「なら!」と大きな声を出す。
「お前ならこの状況を打破できるのかの」
「さぁ、わからん。だがお前が無駄に足掻くより、よっぽどましな結果が出るだろうな」
「なに···っ!」
「その短気も直した方がいい。お前は元々人の上に立つ器ではないのだから、そうなれるように少しくらい努力しろ」
オスカーから預かった資料に目を通す。
これにもまた赤字を表す数字が並べられていて溜息しか出てこない。早く帰ってレヴァンに癒されたい。
「そういえば、お前、人間を娶ったんだってな」
「···それが何だ」
「聞けばアルフレッドも人間に心酔してるんだろ?まあ、あいつは昔から変だったしな···」
「アルフレッドはただ、自分の気持ちを口に出すことが苦手なだけだ。変ではない」
「俺から見れば十分変だっての」
ケラケラとアルフレッドの事を笑うアーサーに高価なティーカップを投げつけてやりたくなる。
「これ以上アルフレッドを馬鹿にするなら許さんぞ」
「お前ら仲悪かったんじゃねえのかよ」
「今はそんなことはない」
アルフレッドにもやる事があるのに、アーサーのせいで俺が自分の仕事を出来ないから、あいつに俺の仕事を任せないといけなくなったんだ。アルフレッドにも迷惑をかけているのに、よくアルフレッドを馬鹿に出来る。
「あいつ、今はどうなの?また狂った考えしてるの?」
「今も昔も、そんなことは無い」
「ああ、狂ってたのは人間だっけ?面白いよな、人間って!」
「口を動かさずに手を動かせ」
「何怒ってんだよルシウス」
怒るに決まっている。
手伝ってやっているのに邪魔をして、更には家族を馬鹿にされたんだ。
「お前も、前はそんなんじゃなかったのになぁ」
「···どういう事だ」
「人間なんか娶ったからじゃねえの?お前、つまんなくなった。···なあ、人間なんて捨てちまって、前のお前に戻ってくれよ」
俺だけを貶すのならいい。
だが今、アーサーはレヴァンの事を貶した。それは許されることではない。
「···次、レヴァンを貶すようなことを言ってみろ。お前を殺してやる」
「···わあ、その目、本気だね。」
アーサーが肩を竦め、部屋を出ていったのを確認してから、手に持っていた資料を床に叩きつけた。
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