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第100話

「ルシウス様、やはり少しお休みになりましょう。」 「···オスカー」 「はい」 床に散らばった資料をぼーっと見る。 オスカーは俺を優しい表情で見るだけ。 「···私は間違っていない」 「ええ。もちろんです。」 確かに間違っていなかったことを確認してから、深く息を吐き少し気持ちを軽くする。 「次、あいつが馬鹿なことを言えば、私はその瞬間屋敷に戻る」 「畏まりました」 資料を拾い集め、トントンと揃える。 早く終わらせれば、早く帰れる。 その思いで頭と手を動かし、作業を進めた。 *** 「レヴァン様が眠れていないと連絡が」 「何···?」 ここに来てそろそろ一週間が経つ。 予定していたよりは作業も進んでいる。その理由はアーサーがあれ以来邪魔しに来ることがないからだ。 「フィオナからの連絡ですから間違いないでしょう。」 フィオナのことだ、きっといろんな手を尽くした結果、何も効果がなく、私に連絡をしてきたんだろう。 どうしたものかと悩んでいると部屋の扉が開きアーサーが入ってきた。その顔にはニヤニヤとした嫌な笑み。 「何?お前の人間が何かあったって?」 「···何も無い、出ていけ」 「おいおい、ここは俺の邸だぜ?」 すぐ側まで近づいてきては、その笑顔のまま私の肩に手を置く。 「まさか、仕事をほったらかして人間の元に戻ったりしないよな?」 「···············」 「お前がそんなことしちまったら、いよいよあの人間は足で纏いだな」 「···お前は一体何がしたいんだ」 「あ?」 「レヴァンを陥れたいのか?それともただ構ってほしいだけか?···どちらにせよ、この仕事を早く終わらせて私はレヴァンの元に帰る。邪魔をするようなら、今すぐ出て行くがな」 一度深呼吸をして目の前の仕事に力を入れる。 そうしている俺の隣に何故か座ったアーサーが「俺はさぁ」と話しかけてくる。

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