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第102話

ジークが熱を出した日、いつの間にか眠ってしまい、そして自分の部屋に戻っていた。 夢の中でルシウスに会えた気がするけれど、それが少し悲しくなる。 ジークは今は熱も治まり、けれど咳が酷くなっていてそれが少し辛そうだった。 「···レヴァン様、早く手を動かして」 「わかんないから出来ない」 「出来ないではいけないのです。」 「···そんなこと言われても」 強制的な勉強の時間、ペンをポーンと投げた俺にフィオナさんは呆れたように溜息を吐く。そういえば最近フィオナさんはずっと俺かアルフレッドさんに付ききりだ。眠っているところを見たこともないし、疲れてるはずなのにそんな様子も見せやしない。 「フィオナさんって、いつ寝てるの」 「夜に」 「俺よりも遅いの?」 「ええ、仕事がありますので」 「起きるのは?俺より早い?」 「はい。朝にもやる事があります」 獣人は人より長い間眠らないといけない。 フィオナさんは確実にそれに達していない。 「ねえフィオナさん、少し休んだら?」 「ルシウス様もオスカーもいない今、この邸の指揮は私がとっています。休んでなどいられません。」 「とか言って、ルシウスがいる時もずっと働いてるじゃん」 「たまにお休みをもらってます。」 ツンツンした返事しかしないフィオナさん。 少しくらいルシウスの前で見せるような姿を見せてくれてもいいじゃんか。なんて思ってしまう。 ツンツンなフィオナさんをも甘やかせてあげることのできるルシウスって凄い。 「ルシウスってさ、何であんなにかっこいいんだろうね」 「あの方は努力を惜しまない方です。だからこそとても素敵に見えるのです。そしてその姿がそう見えないはずが無い」 「···フィオナさんってさ、本当にルシウスのこと好きなんだね」 「···············」 少し顔を赤らめたフィオナさんは「お慕いしております」と恥ずかしそうに言った。

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