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第106話

ルシウスside 「───終わった···」 外はもう真っ暗でキラキラと無数の星が輝いている。 最後の仕事を終えて絞り出したように言った言葉に、何故かしつこく俺の隣にいたアーサーが拍手をする。 「おお、すごいすごい。あの量をこの短期間でやるなんて」 「そう思うならお前も手伝えばいいだろう。···少し眠って、それから帰る」 「それより、何か食おうぜ。腹が減った」 「私は減ってない」 「よく言うぜ。昼も食ってないくせによ」 確かに昼も夜もまだ食事をしていないが、それよりも睡眠を取りたい。少しくらい眠らないときっとまずい。邸に帰ってレヴァンと話すこともできないまま眠ってしまうかもしれない。 「あっそ。せっかく俺様が待っててやったのにさぁ」 「待っててくれとは言ってないがな」 「はいはい。」 どこまでも上から目線のアーサーに腹は立つが気にせずにアーサーが出て行ったのを確認してからベッドに入り目を閉じる。 オスカーにも休んでくれと言っておいたから、アーサーが出て行ったこの部屋には俺1人。 明日にはレヴァンと眠れる。 レヴァンの事を考えると穏やかな気持ちになって、疲れもあってすぐに眠りに落ちた。 *** 朝になると自分の体は獅子になっていて思わず溜息を吐いた。人型に戻り服を着替え帰る準備を済ませて、部屋を出るとそこにはオスカーが。 「邸に帰るぞ」 「はい」 連れてきていた召使い達にも話をして、すぐにアーサーの邸の前に立つ。 「ルシウス、帰るの早くねえかぁ?」 「うるさい。お前の顔を見なくていいように今すぐに帰る!」 「はいはい、お前は本当に俺が嫌いだな」 「好きって言う奴の方がおかしいだろう」 「散々に言うな、お前」 ふん、と顔を背けて自分の邸に向かい足を向ける。 やっと帰れる。やっとレヴァンに会える。 「ルシウス様、他の者が疲れてしまいます。もう少しゆっくり歩いてはくださいませんか」 その気持ちが先走って他の者たちのことを考えることもせずに先々と歩いてしまった。 悪いと思いながらも、レヴァンに会いたいのだから仕方が無い。 「すまない。だがレヴァンに早く会いたいのだ」 「ええ。ですが周りのこともしっかり見ていただかないと。ルシウス様の立つ場所はそういう事が一番大切でしょう」 「···ああ」 わかってはいるし、今まではそうすることが当たり前で、それが普通だった。なのに···やはり私はレヴァンのことになるとそういった部分が脆くなってしまう。 アーサーに弱みを握られないように、そういった所もこれからはきちんとしないと。深く溜息を吐いて、帰路を歩いた。

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