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第112話
部屋について、手を離す。
ソファーに座った俺の対にあるソファーに腰を下ろしたルシウス。
「跡継ぎがいるんだ」
「···わかってるよ」
「私が無理なら、アルフレッド。けれどアルフレッドにはジークがいる。」
フルフルと握っていた拳が震える。
それはさっきは感じなかった恐怖が襲ってきたから。
「だから、逃げ道はない。私はこれからここに子供を迎える」
「な···っ」
子供を迎えるってどういう事?
苦しい、呼吸が何故か上手くできない。
ドクドクと心拍数が上がり、悲しいはずなのに涙は出ない。
「親がいない獣人の子供は少ないが存在する。そこに私達と同じ獅子である獣人の子供はいるかわからない。」
「···それはもう、決定事項なんだね」
「···ああ」
「うん。···そっか、わかった」
ルシウスの一族の事を俺がどうこうできるはずがない。
自分が男であることを恨んで、できるなら夢であってほしい。
でもきっとルシウスは俺をここに連れてきた時から覚悟をしていたんだろう。
その決意は揺らぐことはない。
「レヴァン」
「うん。大丈夫。大丈夫だから、ルシウスのしなきゃいけないことに集中して」
どうしてここに俺を連れて来た時言ってくれなかったの、とか、言いたいことは全部喉の奥の奥にぐっと堪える。
「···すまない」
ルシウスの悲しそうな顔を見たくもなくて、ゆっくり顔を上げ、笑顔を見せてもう一度「大丈夫」と伝えた。
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