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第113話

ルシウスと大切な話をした日からしばらく経って、本当に獣人の子供がルシウスと手を繋ぎやって来た。 俺の前に現れたその子を瞬間的に遠ざけたくなるのを堪える。 「レヴァン、ゲートだ」 「···初めまして」 挨拶はちゃんとしよう。そう思って口を開いた俺をゲートは嬉しそうに笑顔になって「初めまして!」と元気よく挨拶をしてくれる。 「ゲートです。よろしくお願いします!」 ルシウスと同じ金色の髪色をしたゲート。 獅子の獣人が居たんだ。と少しだけ複雑な気持ち。 「レヴァンです。よろしくね」 しっかりいつも通りの笑顔が出来ただろうか。 ルシウスは少し厳しい顔をしてゲートに「あとはオスカーに邸を案内してもらいなさい」と声をかけていた。 俺はその場から逃げ出すように踵を返し、ジークの所に行こうとしたけれど、「レヴァン」とルシウスに呼ばれてそれも出来なくなる。 「···何」 「何だ今のは」 「何だって···何が?」 「ゲートに対してだ。レヴァンが拒む気持ちはわかる。だがそれはあの子供には関係な───···」 その言葉を聞き終えるまでに、我慢ができなくなった。 ルシウスに詰め寄ってその胸を拳で叩く。 「しばらく話しかけないで」 「レヴァン!!」 今度は名前を呼ばれても無視をして足を勧めた。 ゲート自身が嫌なわけじゃない。 そしてゲート自身を恨んでいるわけではない。 ただ、俺自身が”ルシウスの為に”出来る事が何も無いのが苦しい。俺自身に腹が立ち、それを理解してくれないルシウスに酷く当たってしまう。 「···落ち着こう」 こんなネガティブな考えをしていてもいい事なんて起きない。気分転換にどこかに出かけたい。今はこの邸に居たくない。 「レヴァン様?」 「···フィオナさん」 邸の門の外に足を向けた途端、フィオナさんに会って”ゲッ”と声が出た。 「どこに行かれるつもりで?」 「···さあ、どこだろう···?」 ジリジリと後ろに下がる俺をフィオナさんが訝しげに見る。 「予定がないなら部屋にお戻りになっては?」 「それは嫌だ!」 逃げ出そうとしたら、フィオナさんに腕を掴まれ「ゲート様のことですか!」と聞かれた。 「ゲート様がここに来られたからといって、ルシウス様とあなたの関係が変わるとでも?」 「············」 「不安な気持ちでいることはわかります。ですがそれはルシウス様もゲート様も同じで───」 「わかってるよッッ!!」 胸が締め付けられたように痛くて苦しい。 唇を噛んで我慢していたのに溢れてきた涙が頬を伝い地面に落ちた。 「···ちょっとだけ一人にして」 驚くフィオナさんの腕を軽く振り払って邸の外に向かいがむしゃらに走る。今は少しでも邸から遠くに行きたかった。

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