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第115話
邸に着いて、アーサーさんとルキアノスに「誰にも俺がいることを言わないで」と頼み込むと、アーサーさんは「俺は面倒臭そうなことは言わない」と邸のどこかに行ってしまった。
ルキアノスは誰も使わない部屋に連れて行ってくれてそこで怪我の手当をしてくれる。
「アーサー様の言う、ルシウス様がするべき事、あれは真実だ。レヴァンには悪いが一族の当主としてやるべき事がある。」
「···別に、わかってるから改めて言わなくていいよ」
「そうか。それは悪かった」
同じことを言われてまた泣きそうになるのを堪える俺の頭をポンポンと撫でてくれる。
その振動で我慢していた涙がポタポタと落ちた。
「暫く安静にしないとな」
「···ここはずっと誰も使わないの?」
「ああ。」
「なら、暫くずっとここにいる。」
「飯はどうするんだ」
「要らない」
「馬鹿なことを言うな」
撫でられていた所を軽く叩かれる。
ぶすっと拗ねたような表情をすればルキアノスさんが小さく溜息を吐いた。
「飯は持ってきてやるから、絶対に食べること。約束だ」
「···うん」
「ここにあるのは何でも好きにすればいい。俺は今から仕事があるから···それが終わったら飯を持ってくる。」
ルキアノスさんはまるでお兄さんみたいだ。例えば何かあった時すぐに愚痴を言えたり、どうでもいい話を出来たり。
「安静にしてろよ」
部屋を出て行ったルキアノスさんに手を振って、誰のかもわからない少しだけ埃っぽいベッドにゴロンと寝転んだ。
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