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第116話
ルシウス side
「ルシウス様」
オスカーが静かに私を呼ぶ。
顔をあげるといつもの穏やかな表情で立っていた。
「ゲート様に一通りするべき事を説明致しました。それと、アドナさんを呼んで服を新調してもらいますが、宜しいですか?」
「ああ、頼む」
レヴァンを酷く傷つけてしまったことはわかっていて、なのにどうすればいいのかはわからず、そちらのことばっかり気になってオスカーの話に集中することができない。
「ルシウス様」
「···何だ」
「レヴァン様の所には行かれないのですか」
「···今は行っても意味がない」
しばらく話しかけないで。とも言われている。
そんな中レヴァンの所に行けば、きっとまた怒らせるのがオチだ。
「アーサー様がいらっしゃっていますが」
「···待たせておけ」
今はあの馬鹿と話すことも面倒臭い。
「───わかりました。それと、まだ報告はしていませんでしたが、レヴァン様が邸を飛び出して行ったそうです。」
「何だとっ!?」
オスカーの言葉に驚いて立ち上がる私に厳しい顔が向けられる。
「何で早く言わないんだ!」
「貴方様がそのような様子であるからです。さあ、アーサー様がいらっしゃってます。そのだらしの無い顔をやめて、早く応接室にいらしてください。面倒だから逃げる、なんてことはしてはいけません。」
「レヴァンは!」
「レヴァン様が気になるのでしたら、まずはアーサー様のお話を早くお聞きになさってください。」
「そんなことしてる暇は──」
「レヴァン様のお気持ちをよく理解出来ていない貴方様が、レヴァン様を探し、見つけ出したところでどうなりますか。レヴァン様は私達が探します。貴方様はお仕事に取り掛かってください」
オスカーの厳しい声でハッとなり自分のするべきことを思い出す。
「レヴァンを見つけ次第報告しろ」
「畏まりました。」
部屋を出て廊下を歩く間、レヴァンのことに対しての不安をなんとか抑え込んでアーサーの待つ部屋に足を動かした。
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