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第117話

ベッドに寝転んでいると部屋の扉がゆっくりと開いた。 ルキアノスさんが何か忘れ物でもしたのかな?とベッドから起き上がり扉を見るとそこにはゲートの姿。 「···あ、ご、ごめんなさいっ!レヴァン様の部屋だって、知らなくてっ」 「···ここは俺の部屋じゃないよ。···どうしたの?迷子?」 「いえ、あの···邸の中のことは今日の内に全部覚えなさいって、言われたので···」 不安そうに瞳を揺らすゲートに、この邸の中を1日で覚えるなんて無理だろう。と可哀想に思う。 「俺が教えてあげるよ」 「そんな!だって、レヴァン様はルシウス様の···」 「俺はルシウスのお嫁さんだけど、それより不安そうな子供を放っておけるほど冷たい人間じゃないよ」 「そ、うですか···じゃあ、あの、お願いします!」 クリクリとした可愛らしい目を輝かせて俺の方に寄ってくる。けれど俺の足を見た途端顔をさっと青くした。 「け、怪我してる!」 「···さっきちょっと色々あってね。でも見た目程痛くもないから、気にしないで」 「こ、これ、ルシウス様は知って···?」 「知らないよ。言ってないし、君の前でルシウスと会ってからは今日はもう会ってないからね」 ゲートは突然、ヒョコヒョコと動かしていた耳を伏せて「俺のせいですよね」と小さな声で言った。 「何で?」 「俺が···俺がここに来たから、レヴァン様は嫌なんでしょう?」 ゆっくりと顔を上げて俺の目を見つめる。 「···な、にを言ってるの」 「わかってます。レヴァン様が俺のことを嫌ってるのは」 「そんなこと···」 「俺、ずっと一人だったから、だから何とか皆に気に入ってもらえるようにって、今までそうやって生きてきたから、その人の表情や目を見てたらわかるんです。ああ、俺は煙たがられてるな、とか」 苦笑を零しながら悲しそうな声でそう言う。震えている小さな体で、きっと今までずっとずっと頑張ってきたんだろうと思うと、ゲートを避けようとしていた自分がとても恥ずかしくなった。 だって、俺だってそうだったじゃないか。 ずっと村で一人ぼっちで、違う所はもちろんあるけれど、ゲートと俺は少しだけ似ているかもしれない。 「ごめん、俺···」 「俺、ルシウス様とレヴァン様の邪魔をする気はないから···だから···」 「邪魔だなんて思わないよ!!」 ついつい、大きな声が出た。

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