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第136話

邸に帰ったのは結局1時間後だった。 帰ってきてすぐお風呂に入った俺達。 ゲートは部屋に帰ってオスカーさんに話をするために考えをまとめているらしい。 ソファーに座って一人でぼーっとする俺を、突然後ろからルシウスが抱きしめてきた。 「レヴァン、何か悩みがあるのか?」 「え···?」 そう聞かれて驚いて振り返ると、ルシウスの優しい顔が目の前に広がる。 「何で···?」 「外に行ってから暗い顔をしている。···人間の生活を見て何か思い出したのか?」 ルシウスが俺の両脇に手を差し込んで抱っこする。 首に腕を回して「お墓」と言うとルシウスは不思議そうな顔をした。顔をルシウスの首に埋める。 「お墓があるんだ、母さんと父さんの···」 「墓···」 ルシウスはそれだけ言って俺を抱っこしたままベッドに移動する。 ルシウスの膝の上に向かい合わせに座り静かな空間の中で「だから、会いに行きたい」と言えば黙って俺の背中を撫でた。 「会いに行こうか」 「···うん」 母さんと父さんに会えるんだ。 家族みんなが幸せだった頃の思い出がブワッと頭の中で蘇る。 けれどやはりあの二人のことが気になって、仕方が無い。 「レヴァン」 「何···?」 「他にもまだあるんじゃないのか?」 「···え、っと···ら、ラビスさんの、ところの···」 「ラビスだと···?」 ルシウスの声が少し低くなった。 怖くて俯くと「ラビスが、何だ」と聞いてくる。 「ラビスさんのところにいる、俺と同じ村の出身の人間を解放してあげたいんだ」 「ああ···あの人間達か。···レヴァンの頼みだ、仕方が無い。不本意だがラビスと話をすることにしよう。···まだあの時の仕返しも出来ていないしな」 あの時、と言われて嫌な過去を思い出す。 ラビスさんに攫われて散々にされたあの時のことを。 「ルシウス、ルシウス···」 「どうした?」 「抱きしめて。怖い···」 「怖い?どうしたんだ?」 ルシウスに優しく抱きしめられて頭を撫でられると嫌な事は消えていって恐怖は無くなった。 「外に行って疲れたんだろう。少し休もう」 「···うん」 あの二人が今何をしているのか、凄く気になるけれど、元気でいてくれたらなって思った。

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