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第143話
アルフレッドside
声をかけても無視をして、あまりに不思議だったから、スタスタとどこかに向かい迷うことなく歩いていくルシウスの人間、レヴァンを追いかける。
どこまで歩くのか、やっとついたと思った先は寂れた村で、レヴァンが足を踏み入れるとその姿を視界に映した村人が驚いて道を開けていく。
これは帰ってルシウスに報告した方がいいのか?
わからなくて村の外で悩んでいると誰かが俺の尻尾に触れた。
慌てて振り返れば小さな人間がいて「尻尾」と一言言い村の中に入っていく。
様子見をしていると突然村が騒がしくなって、目を凝らしてみるとレヴァンが村人に石を投げつけられていた。
それが瞼にあたったようで、そこが切れて血が流れている。
「レヴァン!」
慌てて駆け寄るとレヴァンは驚いて俺を見た。
村人達は獣人である俺に恐れて離れる。
「血を止めないと」
「大丈夫です。いつもの事だから」
「·········何があった。」
よくよく顔を見たら頬が腫れている。
「···別に何も。お墓参りに来ただけだから、大丈夫」
「わかった。俺もついていく」
「何で?ジークが待ってるよ」
「今はお前の事が心配だ」
そう言うとレヴァンは顔を歪め、「勝手にして」と言って歩いて行く。
「じゅ、獣人様···」
「あ?」
「貴方はレヴァンを引き取ったルシウス様の御家族様か?」
年老いた人間の男が俺に話しかけてくる。
こくりと頷くと「レヴァンは良くやってますか」とよくもこの状況でそんなことが聞けるなと思える言葉を話し出す。
「それが気になったならまずはさっきの事態をどうしてすぐに止めない。お前と同じ村人達がレヴァンに石を投げていたんだぞ」
「これは今に始まったことではない。悪魔の子だとレヴァンを祀りあげれば、何かがあった時お前のせいだと言って少しでも不安が和らぐ。それをあの子は当たり前のように受け入れているんだ」
「それが間違ったことだとわかっているなら今すぐやめろ。殺すぞ」
「ひっ!だ、だが···」
「お前は一人で戦うものの気持ちがわかっていない。それは想像する以上に苦しくて辛いんだ。」
誰にも言えずにジークを守るだけの日々を思い出すと、心が締め付けられるような気がする。
あの日々はとても辛かった。
「レヴァンがそれを許しても、俺は許さない。そしてきっと俺の兄もな。」
先々に行ってしまっているレヴァンを追いかける。
そして辿り着いた場所はもう少しで落ちてしまうんじゃないかと思われるような崖。
そこに立ってある二つの石。レヴァンはその前に跪いた。
「母さん、父さん···ただいま」
そして大粒の涙を流した。
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