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第146話
ルシウス side
自分の右手を眺めて溜息を吐く。
どうしてレヴァンを叩いてしまったのだと。
あの状況でレヴァンが怒るのは無理ないし、もし仮に私がレヴァンの立場にいたのなら、仲直りをしたとしてもなかなか自分を叩いたやつを信頼できない。
きっとレヴァンは一人で部屋に篭っているんだろう。今謝りに行ったとしても追い出されるだけだろうなと思い、ここに留まる。
「ルシウス様、エレニさんとデニスさんが…」
「…すぐ行く」
セシリアが来て私にそう伝えてくる。
立ち上がってあの二人がいる部屋に行くと泣き喚いている。
「二人共どうした」
そんな声がけも虚しく、二人は身を寄せあって二人だけの世界に入っているようで、何かを話してはそのまま抱きしめあっている。
「セシリア、二人の親をここに連れてくるようにオスカーに伝えろ」
「はい」
セシリアは部屋を出ていき、私は二人をそっと抱き上げる。
「二人共落ち着け。」
「触るなぁっ!!」
デニスが私の肩を殴りつける。
けれどその力は弱くて痛みもない。
「エレニっ、エレニがいい…っ、離して…!」
「エレニもいる。大丈夫だ」
二人をそのままベッドに運び、隣同士で寝かせてやる。
「ゆっくり休みなさい。」
「…ぁ、あんたは、何も、しないの…っ」
震えて話すことも出来ないエレニを抱きしめたデニスが聞いてくる。
「しない。大丈夫だ」
「…ね、寝ても、怒ったり、しない…っ?」
「しない。安心しろ」
そう言って頭を撫でると怯えてビクビク震えながらも受け入れている。
「おやすみ」
「……助けてくれて、ありがとう…」
小さな声でそう言ったのはエレニで、少し安心した。
「ああ」
デニスとエレニは抱き合って目を閉じた。
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