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第154話

レヴァンside ルシウスと仲直りしてから数日経った。どういうわけか、ルシウスは俺の村に行くって執拗く言い出して、今はその準備をしている。 「何しに行くの。波風立てないでほしいんだけど」 「いい加減にレヴァンに当たるのは辞めろと言ってくる。」 「余計なお世話。それで村人達が明るく暮らせるならいいでしょ。」 「良くない!私はレヴァンがそういう風に扱われている事が納得出来ない!両親の墓参りでさえ充分に行えないじゃないか!」 「···いいんだって。母さん達にはたまに会いに行くようにするし、何も問題ない。ね?」 そう言うとすごく厳しい顔をして俺の肩を掴んだ。その力が少し痛くて顔を歪める。 「問題ある!!」 「っ···うるさいなあ!!」 ルシウスの手を振り落として、睨みつけた。 「余計なことしないで。そんなんじゃ···今まで何の為に頑張ってきたのかわかんない。俺の努力を全部無駄にするつもり?」 「そ、そうではなく······」 「そういう事じゃん!今までみんなが幸せならそれでいいって思ってたんだよ!!だから我慢してきた!!」 怒鳴る俺に驚いているルシウスは、何も言うことはない。そばに控えていたフィオナさんも、目を見張っている。 「俺の為を思うなら、何もしないで」 今までの事を思い出すと、泣きたくなる。けれど村人達は不安を俺に当てることで幸せを得ていたんだ。もしルシウスがやめろなんて言ったら、どこにその不安を持っていけばいいのかもわからずに、困り果てるに違いない。 村人達は嫌いだ。少しは恨んでだっている。けれど、幸せを奪いたいわけじゃない。 「···レヴァン、私の話を聞いてはくれないか」 今度は優しく、俺の輪郭に沿って撫でるルシウスに目を向ける。怒鳴った事で心は落ち着いて、ゆっくりと呼吸を繰り返した。 「私はレヴァンを守りたい。村人達を思うレヴァンの思いもわかる。けれど、そうしていては······いつか、レヴァンが亡くなった時、村人達はレヴァンと同じ様に、新たな犠牲者を出すかもしれない。」 「······犠牲者···」 「その子も、レヴァンの様に村人達に虐げられて生きていくのか?レヴァンはそれでも構わないのか?」 そんな質問、ずるい。 いいわけがないだろうと、言いたいのに、口からは言葉がなかなか落ちない。 「恩着せがましい言い方で悪いが、レヴァンには私が居た。だがその子には···誰もいないかもしれない。」 「······ずるい」 「ずるくてもいい。それでも、レヴァンを守りたい」 抱きしめられると、もう拒否はできなかった。ルシウスの胸に顔を埋めながら「勝手にして」と言うことしか出来なくて、解放されても、スッキリはしない。 「すぐに戻ってくる。ジークとアルフレッドと、待っていてくれ」 キスをされて、離れて行く。 虚しさが、心の中から消えてくれない。

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