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第9話 政略結婚

「おまえとT社令嬢の縁談がうまく行けば、事業はますます大きくなる。ミヤウチ君を押している奴らもあきらめるしかないだろう」  大きくうなずきながら父親が満足げに笑う。  今の時代に政略結婚なんかを考える父親の愚かさにめまいがした。  何より黒崎は既に沢井と結婚している。  現在の日本ではまだ法的には認められていないとはいえ、お互いが唯一無二の相手だと思い合ってるし、黒崎にとって沢井以外の相手は考えられない。 「俺はあんたの言いなりになんかならない……絶対に」  黒崎が怒りに掠れる声で、言葉を絞りだすと、父親は汚いものでも見るような目で息子を一瞥した。  そして唾棄するように口にされる言葉。 「沢井和浩とかいう男の所為か?」  一瞬頭が真っ白になった。  どうして? どうして、父さんが、和浩さんのことを……。  驚愕のあまり言葉も出ない黒崎に、父親が歪んだ笑みを浮かべた。 「私が何も知らないとでも思ってたのか? 全て知ってるぞ。おまえが沢井という男と一緒に暮らしてることも、おまえたちが恋愛関係にあることもな」 「……なんで……?」  黒崎は何とか声を絞りだす。 「探偵を使えばそんなこと簡単に調べてくれる。これから会社を継ごうとする息子が下劣な女とでも付き合ってたら大変だと思ってたが、まさか男とできていたとは流石に想像もしてなかったよ」

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