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第15話 Side.Sawai 嫌なざわめき
家へ帰るための電車に乗っていても、沢井の心は嫌なふうにざわめいていた。
黒崎は真面目過ぎると言っていいくらい外科医師の仕事に向き合っている。
いつも時間よりも随分早くから来て、色々調べ事やカルテに目を通したりしている。
そんな雅文が仕事に遅刻してきて、何の連絡も寄越さないなんて……。
沢井の中で嫌なざわめきがより一層強くなる。
過去に一度、こんなふうに黒崎が何の連絡も寄越さず、職場に来なかったことがあった。
それは決して決して思い出したくない悪夢のような出来事だった。
黒崎が大学時代の知人たちに輪姦されるということがあったのだ。
……まさか、またあいつらが雅文の前に現れた?
沢井は爪が食い込むほど強く拳を握りしめた。
あまりにも恐ろしい想像に、体がカタカタと小刻みに震え出す。
もし、新たなストーカーに付きまとわれ襲われていたら?
その美貌ゆえ、黒崎は過去に何度かストーカー被害にも遭っている。
黒崎の場合、ストーカーは女も男も両方だ。
それとも突然気分が悪くなって家で寝ている?
でもそれなら電話の一本くらい寄越すだろうし。……もしかして気を失って倒れてる?
嫌な想像はあちらにもこちらにも振れ、沢井を苦しめる。
果てしなく長く感じた電車を降りると、沢井は二人で暮らす自宅マンションへと駆け出した。
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