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第16話 Side.Sawai 何処へ

「雅文! 雅文、いるか!?」  沢井は部屋に帰りつくと、震えが止まらない手でもどかしく鍵を開け中に入り、恋人の名前を呼んだ。  しかし部屋のどこにも黒崎の姿はなかった。 「どこへ行ったんだ……雅文……」  憔悴しきった声で呟く。  沢井はポケットからスマホを取り出し、川上に電話を掛けた。 「ああ、川上? 雅文は来た? ……連絡は?」 『ないよ。あったらすぐにおまえに電話させるよ。……なあ、それより明日になっても黒崎が帰って来なければ一度警察に相談してみたらどうだ? どう考えてもあいつが自ら姿を消す理由はないだろ』 「……そうだな」  確かに雅文が自分の意思で仕事をサボり、行方をくらますとは考えられない。  でも、雅文は当に成人している。  明らかな事件性がない限り一晩行方が分からないからと言って警察がすぐに動いてくれるとは思わない。  どうすればいい? 俺は、雅文。  おまえは今、どこにいるんだ?  ちゃんと無事でいてくれるのか? 誰かに傷つけられたりしてないか。  沢井は心配のあまり気が狂いそうだった。  ……とにかく一応警察に相談しよう。  情けないけれども今の自分にできるのはそれくらいしかない。  捜そうにもどこを捜せばいいのか分からないのだ。  再びスマホを手に取ったとき、沢井は思い出した。  そうだ、あいつなら、直ぐにでも雅文の行方を捜し出してくれるかもしれない。  スマホを手にしたまま書斎へと急ぎ、机の引き出しから名刺ホルダーを引っ張り出した。  確かここにいれたはず……。  ペラペラと名刺ホルダーを捲り続け、ようやく目当てのものが見つかる。 『野口探偵事務所』  沢井は名刺に書かれた電話番号に電話をかけた。

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