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第18話 さよなら……
黒崎の目から涙が幾筋も伝う。
会えない、会えない。
もう二度と和浩さんと会えない。
心の中、沢井との思い出がたくさん蘇る。
出会って、恋に落ちて、時に擦れ違い、遠回りをして、ようやく一つになれた最愛の人。
黒崎は自分の左手の薬指にそっと触れた。
今、そこには指輪はないが、黒崎が生涯添い遂げる相手は沢井だけ。
唯一無二の運命の相手。
プロポーズされた瞬間の幸せ。
新婚旅行の楽しかったひととき。
忙しく過ぎて行く日々の中、二人は揺るぎない愛を育んで暮らしていて。
……だから、大丈夫、和浩さん。
俺は和浩さんと出会え、一緒に居られてもう充分すぎるくらい幸せを貰ったから。
和浩さんとの思い出だけできっと生きていけると思う。
黒崎は泣きながら小さく微笑んだ。
『黒崎、俺の人生まるごと、おまえにやるよ。だからずっと傍にいてくれないか……?』
そんなふうに言ってくれたこと、あったよね?
もう傍にいることはできないけど、俺はいつまでも和浩さんだけのものだよ。
だから和浩さんにもいつまでも俺のこと好きでいて欲しいな。
ね、お願いだから俺のこと忘れないで。
「やだな、本当、俺、どれだけ独占欲の塊なんだろ……」
広い部屋に零れ落ちた声は涙で震えていた。
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