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第23話 癒してくれる人は……もういない
黒崎のシャツをはだけた男はゆっくりとその肩口に唇を這わせる。
嫌だ……やだ……助けて……和浩さん……!
心の中、どれだけ沢井を呼ぼうが彼が来ることはない。
……俺はまた和浩さん以外の男に無理やりされてしまうのか……。
黒崎の脳裏に過去の悪夢が蘇る。
黒崎は過去、複数の男性に強姦されたことがあった。
今でもあのときの悪夢を見ることがあるくらい、それは黒崎の心に深い傷を与えていて。
沢井の腕に包まれて眠るときは、決して悪夢を見ないが、一人で眠るときは時々魘されて飛び起きるくらいだった。
もうあの悪夢を見ても、癒してくれる人は永遠にいない。
そしてこれから起きようとしてる同じような悪夢から救い出してくれる人も決していない。
そんなふうに考えると、黒崎はもう何だか全てが虚しくどうでもよくなって来た。
抵抗する気力ももはやなく、華奢な体がベッドに沈み込むのに任せた。
沢井の傍にいることは叶わず、外科医師として誰かを救うことさえできなくなった自分にどれだけの価値があるというのか。
何の価値もない。
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